第7話 第一子

祖母は十六歳で、祖父と結婚した。祖父の兄はあんなだから、祖母は身体が弱かったが、いわゆる嫁の仕事と、家業を手伝った。

昭和十年代から二十年頭は、第二次世界大戦があり、日本は物資が枯渇していた頃、祖父は、養豚業と小売りや卸しと手広く精力的に精肉業を始め、会社をどんどん大きくしていった。それはそれは忙しく、社員も何人も雇って居た。そんな従業員の飲食も、祖母が用意する。小さなか細い身体で、一升炊きの米、大鍋で煮物、どれだけ大変だった事か。

せっかく宿った命が、死産だった。

男の子だ。


母の兄になる。


田舎を悪く言う訳ではないが、とんでもない田舎に、昔は、産婦人科医院なんて無かった。それどころか、医師すら居なかった。出産は、お産婆さんが赤子を取り上げる。

そういえば、隣の家にかなり高齢のお産婆さんが棲んで居たが、彼女はそういう免許などあったのだろうか?謎である。

祖母の様な特異体質の妊婦なんて、扱いが解らなかっただろう。

今でこそ、超音波やらなんやらで、胎児の様子が解るが、昔は何も見えないし、解らないし、お産で亡くなるなんて、よくある話だった。なんとも怖い話だ。


とんでもないといえば、祖父の兄だが、出て行った先で、第一子が産まれた。

男の子だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る