第6話 巻物

聖武天皇?あれ?聞いた事がある。

綺麗な蜜柑色の金糸銀糸が織り込んである絹織物が端に張られた巻物を転がして広げると、生成色の上質な紙にわちゃわちゃわちゃわちゃと名前が枝分かれしてこれでもかと細かく書かれている。

「そうでしょ、これは、時代背景も一緒に書いてあるのよ。この続きを書く番だったんだけどね、統一さん亡くなっちゃったからね、止まっているの。」

年代物の巻物。どうやら竹平家の家系図らしい。

「平家の落人だったの、逃げて来たのよ、ここまで、山奥、そう、この竹藪まで、隠れたの。」

「ふぅん。。」

そう言われても、ピンとはこない。

今は、家業があるし。うちは分家らしいけど、本家やその他の親戚とは、ほぼ付き合いが無い。

そうそう、祖父は、祖父の兄弟の一番兄の養子になっていた。祖父の兄の名前は知らないが、兄嫁の名前は、聞いている。浪江さんだ。浪江さんには子供が出来なかったそうで、祖父が養子になった。。と、ここまでならまだ良いが、兄が自宅から百メートル位の所で浮気して、子供まで出来てしまった。最悪だ。浪江さんは、お嫁さんだったのに、立場が無くなってしまい、苦労した。高血圧症で、ある朝突然倒れたらしい。そのまままだ五十代だったのに亡くなってしまった。キラキラした物が大好きで、金や銀の指輪やネックレス、ブローチなどなど沢山の貴金属を亡くなるまで蝦蟇口に入れて大事に肌身離さず持って居たそうだが、息を引き取る時には、消えていたそうだ。見舞い客の誰かが、盗んだのだろう。浪江さんが他界した頃、私はまだ二歳にもなって居なかっただろうか、だが、何故か、浪江さんの宝物を盗んだ犯人の顔をはっきりと覚えている。

可哀想な浪江さん。そんな浪江さんと統一の兄の名前もまだ巻き物には、書かれてはいなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る