第32話 帰りの電車にて

「とても濃いメンバーですね。びっくりしましたよ。サト先生も物怖じしなくなったし、いい意味で変わりましたよね。」


 山田くんとは帰りの電車でも話をしました。


「そうかな……私も大人になったという事でしょう。えへん」


「僕がどんな歌会かに興味があることを見通して、なんか上手く転がされた気がする。さすが萩井課長補佐。経理の北壁と怒られているだけのことはある。サト先生が変わったのもその影響かな」


「それは無いです。絶対に無いです」


 とはいえ、北壁さんが道化を演じてくれている気はしていた。初対面の時、私が緊張しているのを見越して、ボケたり突っ込んだりして、和ましてくれたのかな……イヤイヤ、どう考えても、あの性格は地でしょう。


「それに皆さん、いい筋肉をしている。細井さんの上半身が凄く鍛えられていたのは、営業部でサウナに行った時に気づいていたけど」


「ゴン太さんは、毎朝、自宅用の薪割りをしてから出勤していると聞いたことがあるから、その所為では」


 薪のお風呂は気持ち良いのだろうか。自然に囲まれた生活は楽しそう……虫さえいなければ。


「雲井主任もバランス良く鍛えられている。格闘系というより、特定のスポーツ……水泳かサイクリングだと思う」


 雲助さんは枯れてると思っていたけど、鍛えていたのか。会社での姿は仮の姿……なんちゃって。


「……よりによって、あんな独身美男子の群れに、無自覚なサト先生が所属しているなんて、心配で見ていられない」


 山田くんは小声でなにか言っているが、よく聞こえないよ。ディスられている気がする。


「それよりも、明日は大丈夫ですか?」


「何が?」


「魔法使いの皆さん、結構なおしゃれさんですよ。僕もそうですが、明日は落ち込まない様に心の準備が必要です」

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