第27話 メインイベント①

「みんな知っての通り、あれやこれやの流れで、俺と夏芽が今回初参加の山田くんと、ツグミンの初デートを賭けての、短歌勝負をすることになった」


 ツヤツヤとしたドヤ顔で、北壁さんは宣った。


「異議あり。初デートってなんですか。私だってデートくらい……」


 あれ、私ってデートしたことあったかな?


「父とふたりでお出かけした事くらいあります」


「ツグミン……お父さんとお出かけするのは、デートととは言わないよ」


 夏芽さんの鋭いツッコミが入る。


「それに、あれやこれやってなんですか。私と山田くんの後をつけて来ただけですよね」


「諜報活動をしただけだ」


 私がぷんすか怒っていると、


「大丈夫ですよ。僕はサト先生に教えて貰った短歌と、野球への愛は、誰にも負けません」


 胸キュンなセルフの中に、私への愛がないのは気になるが、いいぞ、山田くん。負けるな。


「気持ちよく勝って、明日の高校野球地区予選の準々決勝で、頑張っている後輩たちの応援に一緒に行きましょう」


 ん? それはデートなのだろうか。山田くんの中の、私の立ち位置は何なのだろう。


「話もまとまったことで進めるぞ。名前を隠してもすぐバレるから、順番に出していく。雲助、ゴン太、ツグミンはそれぞれ一番良い歌に票を入れ、結果を出す。それでいいな」


 勝手に話が進んでしまった。もうそれでいいです。


「軽く自己紹介するよ。僕の名前は、雲井夏芽だ。性別は女だ。ここは大事だから覚えていてね。それではではいくよ」


 いつものキラキラオーラを出しながら、夏芽さんから始まった。



百日紅の紅を差しぬ夢一夜

あなたの妻となる蟷螂



「いつものエロ短歌ではありませんね。怪談的というか、幻想的というか」


「夏といえばホラー。今回はヨッシーと示し合わせて、ホラー短歌にしたんだよ。怖さに耐性のないメンバーもいることだしな」


 誰のこと? と思えば、ああ、ゴン太さんのことでしたか。


「まんじゅう怖い。まんじゅう怖い……」


 それは落語だし。本当は振りじゃないですか。


「一夜妻ということは、女郎歌かな……百日紅の紅も安物を使っている感じがする。最後の蟷螂は、物の怪とも読めるし、男を食い物にする魔性の女とも読める。雌の蟷螂は用が済めば、雄を食べちゃうしね」


「ああ、だから小学生の時、父の書斎で見つけたカマキリ夫人のDVDを母に見せたら、父は正座させられていたのですね。納得です」


「ツグミン、それは違うと思う」


「次は俺の番だな。俺の名は萩田良雄。皆からはヨッシー又は北壁さんと呼ばれている。前置きはここまでだ。ほんとうの恐怖を堪能しやがれ」


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