第4話 全員集合
「あ〜、ハゲが鶇ちゃんを苛めている」
「夏芽お姉様!」
よよよと泣き崩れるふりをして、平たい胸に顔を埋める。あっ、ちょっとだけ膨よか。
駄目よ鶇、桃色の妄想はお家に帰ってから……。
「なんか、失礼なこと考えてない……鶇ちゃん」
「ソンナコトナイヨ」
「苛めてねえよ。今日から俺達はスキンヘッド同盟を組んで、お前ら悪の歌組織に対抗すると決めたんだよ」
「そんなの嫌です。悪の親玉ははげ、もとい、萩田課長補佐の方がお似合いです。私は夏芽お姉様の下僕」
「てめえ、あっという間に裏切りやがったな。あと、今、ハゲって言ったろ」
「ソンナコトナイヨ」
ギャーギャー騒いでいると、最後の一人、雲井主任がやって来ました。
「鶇君は相変わらず騒がしいね……。席にも座らないで、注文もしないからお店の人が困っているだろう」
「私ですか?この北壁に突っ込みはなしですか?ひどいです。雲井主任を見損ないました」
「てめえ、言うにことかいて北壁呼ばわりか。お前と雲助の経費は絶対に通さんぞ」
「ちょっと待て。何で俺まで巻き込まれているんだ」
「お前はこいつの指導役だろうが。こいつの不始末はお前の不始末だ」
「あの〜、もう少し静かにお願いできますか?隣の部屋から苦情がきてます。あと、ご注文宜しいですか」
言い争っている私達の隙間を縫うように、若い女性の店員さんが会話に入ってきました。
「ほらっ、皆、席に座って座って。全員、生中で良いか?」
「私はレモンサワーでお願いします」
私が異議を唱えると、
「僕はハイボール」夏芽さんが続いて、
「俺はいつも焼酎のロックと決めているだろうが」
萩田課長補佐が焼酎のボトルを注文し、
「僕は生中でいい……」
静かなるゴン太さんだけが同意する。
「みんな協調性がないなぁ……店員さん、飲み物はそれで。取り敢えずいつもの鶏からを人数分持ってきて」
雲井主任が申し訳無さそうに注文する。
「お前等な、この店を追い出されたら、次から会社の会議室でやるぞ。もう少し、自重しろ」
ええ〜、会議室は嫌だな。
「雲助は酒がないとヘタれて、盛り上がりに欠ける。それに、注目されてやり難い」
やったんだ。やり難いとはなんぞや?
「前に凄い騒ぎになっただろう。僕は可愛い子猫ちゃんと遊べるからいいけど」
会社に夏芽さんが来たら、そら騒ぎになるわ。
「けっけっけっ、誰にも女と認識されなかったけどな。お前は男前過ぎんだよ」
「へん、僕より身長の低いハゲに言われたくないね。(小さい声)……では負けるけど」
そうなんです。夏芽さんの身長は175cmあるんです。ワイルドな風貌に優しく色気ある目元、ああ……尊い。でも、男前過ぎて、お気に入りのスカートでおしゃれを気取ったら、女装のおかまに間違えられたとメールで嘆いていた。
お宝写真を送ってもらったけど……確かに微妙。夏芽さんは少しがさつというか、ワイルドなところがあるから、仕草が男寄りなんだよね。
男前と美人は似て非なるものと初めて知りました。
小さい声で負けると聞こえましたが、聞き間違いに違いません。だって、北壁ですよ。確かに夏芽さんより小柄だけど、地肌が光っている男。
夏芽さんとは勝負になりません。
「お前等、いい加減にしろよ。ほらほら、飲み物が来たぞ。取り敢えず乾杯するぞ。ヨッシー、店内ではサングラスは外せ。ガラが悪いぞ」
萩田課長補佐はしぶしぶサングラスを外し、値の張りそうな眼鏡に替えています。目元に涙ボクロがある。意外とかわいいかも。
「では、五月の魔法使いの会を始めるぞ。乾杯」
息を合わせて、乾杯しました。
さて、短歌の時間です。
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