、、。

泡沫 希生

、、。

 視界の隅で跳ね飛ばされたボールが、ころころころころ転がって自分の夢をあしにした。

 君の腕を捻りあげる影。自分の足も崩れ落ちて、交差点から誰もいなくなった。賭けたのはきっとあの日のこと。

 夢は夢で終わるもの。欠片たちが水面で騒いでる。それを鳥がつついて、魚が遊んで、気づけばそこには残骸だけが存在してた。


「ここから、先は立入禁止」


 歌うように君が告げる。あり得るとしたら百点満点それだけ、と追加で紡ぐ。

 ぬるいんだ、缶コーヒーが。ホットなのかアイスなのかどっちつかず。百円入れたら二回返ってきたあたりで察するべきだった。

 ああ駄目だ、駄目だと、君は呟いた。

 信号機は赤のまんま。

 息を吸って、

 息を吐いて、

 息を止めて。




 からかうようにあの日の自分が笑ってた。道端に落ちてるくせに今日より偉いんだって。

 誰もいない公園で、ブランコに乗っている君の背を押した。君の腕は取らずに、一緒にいた欠片をすくいあげる。

 約束したはず、白線を歩かなければいけないと。説教してたら片隅のゴミ袋がうごめいた。捨てたつもりなんだから、動かないでよ。


「こんどは、大丈夫だよね」


 ささやくように君が話した。可能性はゼロじゃないから祈ろうか、と付け足した。

 排気ガスが甘く感じて薄く笑った。たまには現実も甘いんだね。珍しいから記念に風船を膨らませて、空に向かって放っておく。

 さあ届いて、届いてと、君は叫んだ。

 遮断機は下のまんま。

 足を上げて、

 足を下げて、

 足を止めて。




 いつの間にか過ぎていたけど路地裏に戻りたくなかった。自分の気持ちは会いたくない。

 君がビルの間で、押しつぶされそうになってるのに気づく。差し入れは何にする、金平糖でも一粒どうでしょう。

 肯定も否定も同じだと、夢同士が喧嘩していた。終わらないものだから、口笛を一つ差し込んでおいた。いっそ盛り上げたくて。


「こっちは、準備できてる」


 笑うように君が発した。覚悟はするのではなくて作るものだ、と声を漏らす。

 遠くでチャイムが鳴り響いた。そしたら欠片たちが焦ったように走っていく。今日は、ポイント何倍になるのか知らないくせに。

 まあ良いよ、良いよと、君はわめいた。

 昇降機は上のまんま。

 指を開いて、

 指を結んで、

 指を止めて。

 





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、、。 泡沫 希生 @uta-hope

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