第7話 大団円
世の中において、実に難しいのが、
「調整の取り方だ」
ということではないだろうか?
ことわざにある、
「過ぎたるは、及ばざるがごとし」
というのがあるが、
「まさにその通りだ」
といってもいいだろう。
というのも、今回のこの、
「惚れっぽい薬」
として売り出したものが、
「精力増強剤」
というものだったことで、想像以上の売り上げを示し、一気に、
「品薄、品切れ」
という状態を引き起こした。
最初の宣伝もインパクトがあるものだったこともあって、その効果は絶大だった。
しかも、服用した人の意見がさらに拡散されたことで、却って、
「誰もが使っているんだ」
ということで、嫌らしいというものとは違う製品として、世の中に出回った。
おかげで、利用者は爆発的に増えたのだが、逆に、異常性癖を持っている連中からは敬遠された。
なぜなら、
「健全という形が表に出てくると、異常性癖者には、手が出せないものになるからだ」
というのも、
「健全でなかったからこそ、俺たちにしか与えられないものだ」
ということで、いくらでも使えたのに、それができないということになると、
「そんなものを俺たちが使えば、俺たち自身が、自己嫌悪に陥らせるという、悪魔のような薬になるではないか?」
ということであった。
正常と呼ばれる連中から見れば、
「少々のことでも、この薬を服用することで正当化される」
と思うと、
「これほど楽に楽しめるものもない」
ということになる。
だから、異常性癖者にとっては、自分たちに自己嫌悪を与えるものだと考えると、今度は冷静な目で見ることができ、
「この薬は、諸刃の剣だ」
と思えるようになった。
正常性癖者という人が、正当性を求めるようになると、
「世の中終わりなんじゃないか?」
と、湯本博士は考えるようになった。
湯本博士というのは、今でこそ、
「世界に通用する、日本のリーサルウエポン」
などと言われているほどの、権威ということになったが、若い頃は、異端的なところが多かった。
他の学者を批判することもあったが、その唱える学説は、いつも奇抜で、
「本当に、異端的なことばかりをいつも探求している」
という、ある意味
「変わり者」
と言われていたのである。
そのことを知っているのは、小林助手くらいだろう。小林に限らず、自分のことを誰にも言わなかった博士は、これを黒歴史だと思っていた。
しかし、何でもズバリと指摘する小林は、湯本博士であっても、変わりなかった。
「博士は、若い頃、結構なやんちゃをしたのではないですか?」
というと、博士は意外だという顔をして、
「よく分ったな」
と敬服していたのだった。
そんな博士が、この
「惚れっぽい薬」
を開発することを考え、少しでも、
「少子高齢化」
の進展を何とかしようと考え、それを継承する形で、小林助手が、推進を考えたのだった。
しかし、実際に、今少しずつ、博士が考えていた以上に、どんどん増えていく。これは、某国の属国を推進することになるのだが、それを、博士は懸念していた。
このカラクリについて、国家間ではほとんど、
「最重要機密となっているので、政府高官は分かっていても、それ以下の国会議員や国民などに分かるわけはない」
という情勢だった。
しかも、今の日本のソーリは、それを分かっていて、
「敢えて」
行おうとしているのだ。
そう、何もかも分かっていてのことである。
そのことを、何よりも博士は懸念していた。
「どうして、国家機密を博士が知りえることができたのか?」
ということは、これこそ、
「博士お機密」
となるのだった。
小林はそれを知らないものだから、どんどん、開発し、国民に進めていく。
博士は、小林とはいえ、本当のことが言えるわけもなく、遠回しに話をしながら、
「これは、現代のアヘン戦争なんだ」
というところまでしか話せなかった。
博士は、何とか説得しようと試みていたが、実際に、薬はどんどん売れていく。
これを見て、博士としては分からなかったことだが、
「まさか、小林に話したことが、的を得ていたなんて」
と感じたのだ。
つまり、それが、
「アヘン戦争」
という言葉だった。
あの薬には、常習性があり、まるで麻薬であるアヘンのように、使い続ける。そう、媚薬であっても、そうだし、芸術家が、
「眠らずに自分を活性化させることで、音楽を作曲したり、作家が作品を書き上げたりするのと似ている」
ということだ。
それこそ、覚せい剤であったりの麻薬の効果が、蔓延っているということだ。
そもそも、ここまで効く精力剤なのだから、これくらいのことは当たり前だ。こんな副作用のある薬をライセンス契約として売りつけてくるのだから、実に厄介なことだ。
国民は、ライセンス関係の省庁ができたことは知っていたが、その内容に関しては、完全にオフレコだった。
「どこの国からどんなものがライセンスで契約されているか?」
ということは、直接、某国との契約の時だけ分かるのだ。
もう一つ、省庁を新しくしたのは、その属国とのことを、国民に知らせないようにするため」
という一番といってもいい理由ができたのだった。
そして、その流れが、想像はできていたが、悪い方へと向かっていた。
なぜなら、皆さんはお察しかも知れないが、某国というのは、一目瞭然で分かることだろうが、
「では、その属国というのは、どこなのか?」
ということである。
「これこそ、最重要国家機密であり、このことがバレると、下手をすると、世界大戦となり、世界の滅亡を意味する」
と言えるだろう。
実は、この属国というのは、元々のソ連の加盟国だったのだ。
ソ連が崩壊し、その隙をついて、某国が平和のうちに、密約で、属国としたのだった。
つまり、これは、
「某国と、属国だけの間のことであり、属国は、某国の、諜報国家だ」
といってもいい。
形の上では、ただ、国交があるという意味だったが、内容は、
「ロシアを監視する、某国の属国ということで、スパイのような国だった」
ということである。
どうやら、ロシアも、ここ10年くらいで、そのからくりが分かってきたのか。
「某国がそういうことをするのであれば、こちらも大っぴらに、あの国を攻めることができるではないか」
ということで、約8年前に、彼らが支配するヨーロッパに抜ける半島を武力で奪い取り、支配を続けていた。
何も知らない世界は、
「ロシアの暴挙」
としたが、今度は、属国が、
「ヨーロッパ連合に入りたい」
などと言い出したことで、一触即発となった。
某国からすれば、それも計算済み、そして、さらに戦争になれば、
「ロシアを孤立させることができる」
ともくろんだのだった。
まんまと、ロシアは、その作戦に引っかかり、戦争を仕掛けた。それにより、
「ロシアは最悪の侵略国だ」
ということになり、属国は攻められながらも、実は日ごろ開発している兵器を、ちょうど、試していたのだ。
そんなことを知らない国は、その武器を、某国製だということを聞かされて、どんどん武器を買うのだ。
だから、昨年から始まったロシアの侵攻問題というのは、実際に言われていることとは違い、
「某国を中心とした、陰謀が渦巻く戦争」
だったのだ。
一番可哀そうなのは、属国の国民で、政府同士の勝手な密約と、
「自分たちだけが儲かるため」
というシナリオの犠牲になっているのだ。
そのため、物流は混乱し、物資の流れが滞り、まったく入ってこないものもあったりして、世界的な物価高となった。
そうなると、
「強い国だけが生き残る」
という、そう、まるで、世界恐慌の時のようではないか。
そういえば、今の世の中というのは、
「第二次世界大戦前夜と似ている」
のではないだろうか?
その前哨戦が今行われているロシアの侵攻に始まった戦争ではないか?
そして、ナチスの再来と言われるのが、属国政府、ロシアの大統領が、あの国のダイトウリョウを名指しして、
「ヒトラー(ナチス)」の再来だ」
と言ったというが、まさにその通りではないだろうか?
しかも、日本の政府もそれを分かっているのか、その独裁者がモニターに出てきた時、国会議員の全員が起立して、スタンディングオベーションをしていたではないか。
あれを見て、
「うわっ、これこそ、ナチスの再来ではないか?」
と思った人はどれくらいいるというのだろう?
しかも、今日本では、かつてのパンデミックが続いていて、今にも自殺者予備軍がたくさんいるということで、そんな人たち、いや、経済を復興させなければいけないという状態において、
「自分が、世界外交において、目立ちたい」
という何とも口にするにもおぞましい発想で、ことを進めて行こうとするソーリがいるではないか?
しかも、国民は、そんなソーリのやる暴挙。つまりは、無償で、戦争をしている当事国に、ポンと大金(国民の血税)を簡単にやるというのである。
この偽善行為を、
「当たり前のこと」
などという、さすが、平和ボケの国と言われるだけの日本にいる、
「お花畑思想」
で凝り固まっている人たちが、今頃になって、政府批判をしても、
「やってしまったことが戻ってくるわけはない」
というのだ。
それこそ、
「禁断のライセンス」
といってもいいだろう。
一体、世界はこの情勢に気付かず、政府高官の利益のみが追及され、結局、
「この世界は、このまま滅んでいくしかないんだ」
ということになるのは、必定だ。
「気が付けば死んでいた」
ということになるのか、
「気づくことなどできない」
ということになるのか、結果は同じだが、どうなるというのであろう?
( 完 )
禁断のライセンス 森本 晃次 @kakku
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