【朗読台本】ひとで不足の職場
砂漠の使徒
○○水族館にて
応募者:応募した人。今はニート。
面接官:面接する人。今はサバ(担当)。
☆面接官は柔らかい感じなので、適所で笑っている感じ出すといいカモ
――――――――――
応募者「こんにちは!」
面接官「こんにちは、今日はよろしくね」
応募者「はい!」
面接官「あ、そんなに固くならなくても大丈夫だよ〜。ここだけの話、よっぽど変な人じゃない限り採用しちゃうからさ」
応募者「は、はい……!」
面接官「あ、ちなみに。ここで職員募集してることはどこで知ったのかな?」
応募者「職員募集の広告を見て応募しました!」
面接官「あー、あの『ひとで不足!』ってデカデカと書いてるやつだよね」
応募者「そうです……!」
面接官「うんうん。さて、では次の質問。どうしてここで働きたいと思ったのかな? 志望動機は用意してきてると思うけど、台本どおりにやるのもつまらないし……。そうだ、一言で言ってみてよ! はい、どうぞ!」
応募者「えっ……あー……お魚の紹介をお客様にしてみたいから、です!」
面接官「なるほどね。やっぱそうだよね〜。水族館の仕事ってそこが魅力だからさ」
応募者「……」
面接官「うん、いいね。これだけでも君のこの仕事への思いは伝わったよ」
応募者「……」
面接官「で、これから具体的な仕事内容について説明するね。広告には書くスペースなくて、ごめんね」
応募者「い、いえ……」
面接官「ズバリ、泳ぐだけ! 水槽の中を漂うだけの簡単なお仕事さ!」
応募者「泳ぐ……だけ? あ、つまり、水槽の中から掃除す……」
面接官「そんなのないない! あれ、けっこう難しいから君みたいな初心者さんには任せられないよ〜」
応募者「なるほど……。では、イルカショーのアシスタント的な……?」
面接官「たしかに、あの仕事も泳ぐこと多いねー。でも、違うよ。ホントに泳ぐだけ」
応募者「泳ぐだけ……」
面接官「たまに子供達が触りに来るから、そのときは対応してあげてね」
応募者「あ、はい! 子供、多いですもんね」
面接官「うんうん、家族で来るお客様もかなりいるからねー」
応募者「そうですね」
面接官「で、次に伝えたいことなんだけどさ」
応募者「はい」
面接官「なんと三食まかないつき! さらに、住むところも無料で貸し出しするよ!」
応募者「ええ……!? す、すごいですね!」
面接官「ま、君ががんばって働いてくれるからそれくらいは当然さ。一生懸命働くんだよ!」
応募者「は、はい!」
面接官「あはは、冗談冗談! そんなに緊張しないでね〜」
応募者「……」
面接官「なにか他に質問ある?」
応募者「あ、こういうの聞いていいのかなーってのが……」
面接官「なになにー?」
応募者「お給料って、どのくらい出ますか……?」
面接官「それ、気になるよね! わかった、お答えしよう!」
応募者「……」
面接官「なんと、ゼロ!」
応募者「え……?」
面接官「ご飯代や諸々のお世話をしなきゃだから、お給料は出せないのよねー」
応募者「そ、そんな……」
面接官「それに、君お金持ってても使うところないでしょ?」
応募者「は、はぁ……?」
面接官「だって、人間じゃないからね!」
応募者「んん……?」
面接官「まあ、ヒトって名前には入ってるけど」
応募者「あ、あの。人間じゃない、とは?」
面接官「そのままの意味だよ。だって君、あの広告を見て応募したんでしょ? なら、人間じゃないでしょ?」
応募者「あの広告って……人手不足って書いてある?」
面接官「そう、ヒトデ不足だからさ。今忙しくて海岸にスカウトしに行けなくてさ」
応募者「もしかして、
面接官「むしろそれ以外のヒトデはいないでしょ!」
応募者「まあ……うん……それはそうだな……」
面接官「僕もびっくりしたよ! こんなに大きくて人間そっくりのヒトデがこの世にはいたのかって!」
応募者「……いや、僕は普通に人間ですし」
面接官「え……」
応募者「人間です」
面接官「自称人間のヒトデか!?」
応募者「帰ります」
(おわり)
【朗読台本】ひとで不足の職場 砂漠の使徒 @461kuma
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