Alex to the Zoo.

Ｚ

今朝もアレックスは寝相が悪くベッドの上から落っこちた。むくりと目覚め、自分の体をあちこち叩く。肩からスーッと伸びる両腕、その先端の手のひらと手指、足と脚、首と顔、齧られた跡が無く皮も食い破られていないお腹と背中の皮、脈打つ心臓が、滲んだ汗が、暖かい血が、息を吸うこの口が僕を生きた人間であると教えてくれているんだ。

「アレックス、起きなさい、今日はお出かけするんだから！」

　そうだった。今日は家族で動物園に行く日だったな。楽しみで動物図鑑を眺めていたんだ。索引はアルファベット順。熊やチーターやアヒルやゾウとかキツネとか、ゴリラにカバとかトキとかジャガーやカンガルー。ライオンさんとかモルモット、イモリにフクロウとパンダと、フクロネコさんにウサギさん、ヒツジにトラさんハリネズミさん、ハゲワシさんとかセイウチさん、カジキとザリガニさんも出てきた！きっと、こんな夢を見てしまった後で、動物園に行っても退屈に決まってる。

「僕動物園なんて、行きたくないや！」

　アレックスはまた布団に潜る。