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体が縮んだせいか、甲羅が丈夫になったのか、とにかくちっとも火が熱くも痛くもなくなった。小さな手のハサミで松明を、チョキチョキチョキと分解した。男の指から手から、腕から肩へ、上半身も、頭部でも下半身も、ザリガニのハサミで木っ端微塵に、したにも関わらず男は、何事も無かったかのように元通り。まるでゾンビみたいにしつこく僕を追いかけてきてた。
「お前を絶対食べてやる!」
ひたすら捕食本能だけに従って、僕を追いかけるその男に僕は、そこらへんに転がっている牡蠣を勧めてみたが、
「まだ若い子ガキがいっぱいだよ!ザリガニの僕なんかよりも、そっちを食べた方が美味しいよ!」
「僕は君をじっくり炙ってしっかり焼いて、それから大海老のようにゆっくりと味わい尽くしてやるんだ!」
どうしてそんなに怒るんだろう。見かけた牡蠣に近寄ってみると、その殻の中はことごとく空、ザリガニは体が小柄なため、小回りは利くのかもしれないが、マグロほどは速くは泳げない。
僕はあっさり男に捕まり、男は別の松明を30本近くも取り出して、火を付け僕の体を取り囲んだ。ポップコーンでも爆ぜるみたいに、僕の筋肉がプリプリなタンパク質に変性していくのを感じるよ。しょっぱい海の味がたっぷり染み込んだザリガニを男は一口に、ほおばった。
ドクンと何かが脈打った。僕はこれで死んじゃうんだなって、誰に言われずとも分かった。ここまで何とか生き延びたけど、途中で色んな動物を犠牲にしたけど。ついに僕の旅もここで終わるんだ。
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