エージェントK−3
下東 良雄
エージェントK−3
今日も馬鹿な年寄りが俺の口座に金を振り込んできた。世の中でこんなに騒がれているのにも関わらず、だ。わかるだろ? 騙される方が悪いのさ。金融機関だって何の対策も取っていない。できることは山程あるはずなのに、だ。つまりさ、金融機関だって騙す方の味方ってことさ。
さて、
「よぉ、店長」
「あっ、いらっしゃいませ! いつもありがとうございます!」
いつもの店に来た俺。汗水垂らさずに金を得たことで、喜びにイキり勃ってる俺の息子を慰めてもらおうとここに来たのだ。
「新人さんが入店されましたので、いかがでしょうか?」
黒服の店長から差し出された写真を見てびっくり。超可愛い女の子だ。こんな可愛い子と風俗店で出会えるとは思わなかった。黒髪のショートカットに切れ長の目。まさしく美少女。
「いいね、この子にするよ」
「時間はいかがいたしましょうか」
「今日は懐も暖かいんで、ロングの120分で――」
ポケットの中で振動する俺のスマホ。嫌な予感がする。
「もしもし……はぁ? そんなもんシメて言う事聞かせろよ! ……ちっ、お前使えねぇなぁ……わかった。戻って俺がシメ方教えてやる。一時間後に戻るから。もう
部下が使えねぇ。受け子のコントロールくらい、きっちりやれっての。
俺は大きくため息をついた。
「わりぃ、店長。ショートの45分で頼む」
「お忙しいようですね」
「あぁ、ちょっとな」
「お仕事が忙しいのは結構なことです。ミルクちゃーん、3番のプレイルームでよろしくー!」
俺は店長に3番のプレイルームに通され、ミルクちゃんを待った。
……中々来ないな。
「お待たせしました」
「わっ!」
突如背後から声を掛けられた。
そこには写真で見た通りの美少女がセーラー服姿で立っている。
「ミルクです。よろしく」
実物は、写真とは比較にならない位可愛い。
その笑顔で完全に魅了されてしまった。
「今日はどうされますか? 私、マットプレイが得意ですので、いかがでしょうか?」
「いいねぇ〜、俺もマットの上でローションまみれになるの、好きだぜ」
にやけ顔が止まらない。
「では、服をお脱ぎになって、こちらのマットの上でお待ちいただけますか?」
空気のパンパンに入った銀色のマットが敷かれた。
これからこの上でこの美少女と楽しめる!
俺はさっさと全裸になり、マットの上に正座してミルクちゃんを待った。
「お・ま・た・せ♪」
背後から抱きつかれた俺。
セーラー服を着たままのローションプレイか? たまにはそういうコスプレでのプレイも楽しいかもな。
「ねぇ、お兄さん」
「ん? なんだい?」
「今日は何人騙したの?」
耳元で甘い吐息と共にミルクちゃんから吐き出された言葉。
ミルクちゃんは、驚く俺の頭を背後から抱える。
右手で口を押さえられ、声をあげることができない。
振り払おうとしても、びくともしない。
何なんだ、この女!
「年寄りから騙し取った金で女を買う……」
女が見えなくても分かる。
この言葉に凄まじい怒りが込められているのを。
「お前は詐欺師なんかじゃない。お年寄りの人生をめちゃくちゃにした殺人鬼だ」
だ、誰か、助けて! 誰か警察を呼んでくれ!
その叫びは、すべて口を塞ぐ女の右手に打ち消された。
「お前はこの世に必要ない。この世から出ていけ」
女は、凄まじい勢いで俺の頭を右へ捻った。
その瞬間、鈍い音と共に目の前が真っ暗になる。
最後に思い浮かんだのは、幼い俺を優しく叱りつけている母親の姿だった。
『自分がやられて嫌なことは、他の人に絶対したらダメ。いいわね? はい、お母さんと約束。ゆーびきーりげんまん……』
お母さん、約束守れなかった……ゴメンナサイ……お母さん……
プレイルームの内線電話機を手に取るセーラー服の女。
「エージェントK、任務完了しました。ウチの組織の関係者を騙したのが運の尽き。もう大丈夫です。この世から退場してもらいましたので。後処理をよろしく」
ニヤリと笑うエージェントK。
「本部に帰還前に、コイツのアジトにデリヘルしてきます。まだ仲間がいるようですので……えっ? 違いますよ。私のデリヘルは『地獄のデリバリー』ですから。サービス満点のね」
電話を切ると、エージェントKは男の死体を残したまま、音もなく姿を消した。
『エージェントK』。それは日本の危機を救う女子高生。彼女が動くのは国際的な謀略だけではない。日本の治安を乱し、弱い立場の者たちを食い物にする者もそのターゲットになるのだ。悪人に鉄槌を下す彼女の正体は、いまだ明らかになっていない。
エージェントK−3 下東 良雄 @Helianthus
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