月のない夜

学生作家志望

腐る

夜明けはまだ来ない。腐って地を這いつくばろうがあの人たちは許してくれぬことだろう。


俺たちの夜には月という光がない。


夜明けはまだ来ない。こないだ父親が殺された。父親と言うが名ばかりの偽物だった。本物の父親は会ったことがない。立派な奴では無かったからこれと言った感情は生まれてこなかった。


ボケてたんだ。もうろくに仕事もできないくらい弱りに弱りきっていた。


まともに仕事もできないくせに、オレの周りの奴らは気を使っているのかやっとの思いで貰うことの出来た水を奴に全て上げていやがった。


俺はもちろんそんなことはしない。とっとと死んで欲しいから。


夜明けはまだ来ない。


もしこの夜が明けたら、こんな夜がそもそも存在しなかったら、どれほど人生は楽しかっただろうか。


あいつらは毎日楽をして、俺たちの食事は水ばかり。


腐って腐って腐って腐って。カラカラになって、それでもあいつらにまた今日も朝を奪われた。


これ以上俺たちから何を奪おうと言うのか。


朝は来る、夜も来る。


月はある。


俺たちにとっての敵は誰もいない。


同じように味方もいない。


夜明けなんてとっくに来てる。


あのジジイが殺されたのも、一生懸命に働いていた子供達が殺されたのも、全部飢餓だ。


飢えていく、やがて腐る。


誰も許してくれやしない、逃げ場所はない。


美味しいご飯が食べたい、綺麗な水が飲みたい。


俺にはわからなかった…飢餓で死にかけのジジイに水を譲る理由が。俺たちだってこんなに限界なのに。


誰か助けてくれ、俺たちはここにいる。


朝も夜も来る貧乏な村の夜明けとなってくれ。

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月のない夜 学生作家志望 @kokoa555

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