学校一の美少女が恋愛に興味があるそうです

すりたち

第1話 出会いは突然に

「はぁ、彼女欲しいな〜」


 そんな独り言を漏らしながらいつもの帰り道を辿る。


 ぼーっとしながら歩いていたら、公園の端でコソコソとピンク色の本を読んでいる人がいた。


 しかも俺と同じ高校の制服だし、何より驚いたのは女の子だということだ。


 どうしても気になり後ろから足音を殺し近づいていく。


 あれ、サナさんじゃね?学年一の美少女とされるサナさんが何やらピンク色の本を食いつくように読んでいる。


 うわ、際どいなーなんてことを思いながら後ろから覗き見ることに集中していると足元の小枝に気づかずに踏み抜いてしまった。


「あ、やべ」


 ぼきっという小枝が折れる音に反応してサナさんがこちらを振り向き、目があってしまう。


 しばらく無言で見つめあったのち、何も無かったかのように明後日の方向へと足を向けて歩き出す。


「待って!」


 その声に反応し歩みをピタリと止める。


「ここで帰したら本当にまずいから、弁明させて」


「あ、はい」


 ちょいちょいと呼ばれ同じベンチの隣に座らせられる。


「まずこれ私のじゃないから落ちてたやつだから、あと読んでたのは何の本かなって気になっただけだから」


 早口で捲し立てられるように1人で喋り出す。


「そうなんだ、それにしては結構熟読してたように見えたけど」


 うっかり心の声が漏れてしまった。


「はあっ!?いつから見てたの変態!」


「変態って...そんな本読んでねぇ?」


 チラリとサナさんの横に置いてあるピンクな本に目をやる。

 

「別にいいでしょこれは!それより女の子のクラスメイトを後ろから眺めてるそっちの方が変態だから」


「はぁー?そんな本読んでるクラスメイトいたら普通気になると思いますけどー?言いがかりはやめて欲しいなー!」


 わーわーと言い合いを始め互いにヒートアップしていった。



「あーもういいわ、だって気になるでしょこんな本落ちてたら普通」


「まあ分からなくはないけど公園のベンチはやばいでしょ」


「んーそれは確かになー、てか気になるんだ」


 ニヤリと笑い距離を詰めてくる。


「それは、まあ...」


「いやー実の所言うとさ、恋愛に興味があってさ」


 照れるように言うサナさん


「いやでもその本は違うくない?」


 ピンクな本は恋愛とはちょっと違う気がするが


「いやいや恋愛って最終的にはそういうもんでしょ」


「てかサナさんてそういうの興味あったんだ」


 モテモテだろうしすぐに彼氏ができそうなサナさんがそういうふうに思っているのは意外だった。


「私だってあるよ、それくらい、あとこんな失礼な出会いなんだし呼び捨てでいいよ」


「ふーん、俺も呼び捨てでいいよ」


 そんなこんなで一気に距離感が近づいたような気がした俺たちだった。






 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

学校一の美少女が恋愛に興味があるそうです すりたち @siu_desu3

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ