第4話 おとなしいあたし

 ひと通り話を終えて、侍に連れていかれた先には、青い目をした男がいた。おまけに髪の毛まで、黒ではなく黄金色で目がちかちかする。そして侍同様に、見上げるほど背が高い。

 あたしをちらりと見てから、きんぴか男は侍に苛々と話しかけた。


「なに、その子は。こんなときに女遊びなんて、君、ふざけているわけじゃないよね」

「隊長。彼女はオリ、オーリン。町に一人でいたところを保護しました」

「は? 町に? 旅人、にしては手ぶらなようだけど」

「ええ、怪しいとは思ったのですが、置いてくるわけにも行かず、連れてきました」

「なるほどね」


 生前からは考えられないほど、おとなしく侍たちの言うことを聞いているあたしに対して、二人の話はあんまりだ。あたしは怪しいと言われて、黙っていることができなくなった。


「ちょっと、怪しいとはどういう意味さ。生前のおこないを悔いて、おとなしく連れられてきたあたしのこと、ちゃんと裁いてもらえるんでしょうね」

「生前? この子、なにを言っているの?」

「ええ、その、ちょっと会話が噛み合わないというか、聴取に時間は掛かりそうかと」

「あのね、こっちはとっくに覚悟決めて来てんの。隊長だかなんだか知らないけど、さっさと一番上(閻魔)に会わせなさいよね」

「一番上って……。自分のことを裁けとか言っている子を、あの方に会わせることなんて、できるわけないじゃない」

「なに言ってんだい。それがあの方の仕事でしょうが」

「はあっ!? そんなわけないだろう」

「え? ちがうのかい?」

「ちがう」

「ちがうな」


 当然だと思っていた認識――閻魔様が死者の魂を裁く、というのはどうやら違うらしい。二人に揃って呆れた顔をされて、あたしは肩を落とした。


 ――こいつぁ、しまった。まあ、初めてあの世に来たんだし、聞いていたのとちがうことがあっても仕方がないか。

 

「えー、あたしの早とちりだった。すまないね。そしたら、だれに話せばいいんだい?」

「なんだ? 急にしおらしくなったね。私が聞こう。とりあえず、話してみなよ」

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