第3話 廊下で? あんたに? 閻魔様も忙しいんだな
「さて、じゃあお前のことを聞かせてもらおうか」
「ここで? あんたにかい?」
話を聞くのは閻魔様の仕事だと思っていたが、この侍がそういう役目の部下だったのかと、あたしは驚いた。しかも今いるのは、異国風の城の廊下のようなところだ。
少なくともどこかの部屋で、閻魔様と向かいあうような想像をしていたあたしに、侍は呆れたような顔をして腕を組んだ。
「ああ。ここで、俺にだ」
たしかに異国の人までここに来るのでは、閻魔様も忙しいだろう。なるほどと、あたしは妙に納得していた。それに安心もした。きっとあたしは、閻魔様直々に会うような極悪人からは外れたのだろう。
「……そうかい。わかったよ。――あたしはお
目を丸くした侍の間抜けな姿に、あたしは思わず笑ってしまった。
「ふふ。どうせ隠したところで、あんたの上司にはバレちまうんだろうから、こっ恥ずかしいけど自分で言っとくよ。霧隠れ一味ってのは、義賊なのさ。みんな気のいい奴ばかりでね。悪党から金を奪っては、貧しい人たちに配ってたんだ。まあ、そんなことを言っても、泥棒には違いないか」
「ちょっと待て。お前、なんでそんなことをペラペラと」
「はあ? あんたが聞いたからじゃないか」
侍は訳が分からないとブツブツいいながら、あたしの言ったことを書きとめている。
「……はあ。えーと、名前は、クモガク……? すまないが、もう一度いいか?」
「雪華のお凛だ。お凛でいい。――で、あんたは?」
「オリ? オーリンだな。俺は、カールシス・フォン・グライストンだ。このグライストン王国騎士団の、副団長をしている」
「お凛だ。えー。かーる……。ま、いいか」
「……カールシスだ」
やはり異国の侍だ。聞いたこともないような名前の響きに、あたしはそう思った。
あの世に国の名前らしきものがあることにも驚いたが、あの世がほかの国も一緒くたのものだったのかと、考えてみれば当たり前かもしれないことを、あたしは思った。
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