最終話:だから素直になりたいの。

若彦わかひこが会社に行ってる間もヒマなサグメは、ソファでゴロゴロ

しながらテレビなんか見ていた。

とにかくなにもしない女神。


さすがにパンツのままじゃダメかなって思ったサグメは若彦が出してくれた

ジャージを着ていた。


昼間だからテレビは情報番組なんかやってる。

くっだらないニュースを巻き返し繰り返しだらだらやってて、毎日どこかで

人が殺されるし、どこかで火事が起きてる。

まあ、そのせいでサグメはけっこう世情に詳しくなった。


これなら高天原のほうが平和ねってサグメは思った。


ヒマ、ヒマ、ヒマ・・・ヒマと言うこともあってそろそろサグメに発情期が

やってきそうだった。

つまり潤いがなくなって来たってことかな。


だから若彦が帰ってくると、待ってましたとばかりに彼にしがみついた。


「もう、遅い〜」


「仕事なの・・・忙しいんだよ」


「そんなの辞めちゃえばいいんだよ・・・私と家でぐちゅぐちゅしようよ」

「なに、そのぐちゅぐちゅって?」

「それに仕事辞めたら、たちまち食っていけなくなるだろ?」

「ふたりでホームレスやるか?」


「それより待ってね、ジャージ脱ぐから・・・」


「いいから・・・脱がなくていいから・・・あのさ、疲れてるの・・・

静かに、おとなしくしててよ・・・ちょっとでいいから休ませて」


「ほんっと、つまないの・・・ぜんぜんノってくれないしカマってくれない

んだもん」


「あのな〜!!僕にどうしろって言うんだよ」

「サグメはいいよ・・・昼間な〜んにもしないでゴロゴロしてるからな」

「好き勝手言って、好き勝手して!!なにもしないし・・・」

「僕にくっついてきたって態度だけ意味深だし・・・誘うだけ誘って有言不実行

だし・・・もういいから高天原に帰れよ」


「・・・・・・」


「なに、黙ってるんだよ」


若彦はてっきりサグメが食ってかかって来るもんだと思っていた。


「ウソ?・・・今度はダンマリか?」

「参ったな・・・調子狂うよな、絶対食ってかかって来ると思ったのに・・・」

「あのさ・・・無視されるくらいイヤなことないんだぞ」


「だって、余韻に浸ってたの・・・私ね、怒られると感じちゃうの・・・

特に好きな人に怒られると私のあそこがキューってなるの」


「え〜?、なにそれ?」

「それに好きな人・・・って僕のこと?」


「私、とっくに若彦のこと愛しちゃってる」

「だけど結局みんなこうなっちゃうんだよね」

「私がダメ女だから・・・」

「私は図々しく居候してるだけで、なんの役にも立たないもんね」

「ごめんね、私が悪かった・・・」


「あ〜・・・いや、そんなに自分を卑下しなくても・・・」

「僕も悪かった・・・いい過ぎたし・・・」


「う〜〜ん・・・いいんだよ・・・」

「・・・ねえ・・・若彦、お願いがあるんだけど、いい?」


「ギクっ・・・なにお願いって?」


「あの・・抱いて?」


「え?」


「私とエッチいことしよ」


「なに?どうしたの急に・・・」


「本当は私、心の中を見透かされたくなくて、いつも虚勢張ってたの」

「子供の頃から負けず嫌いだったからね」

心にもないことをしゃべったり相手を困らせるような態度取ったり・・・」

「それって本当の私じゃない」

「だから素直になりたいの・・・好きな人の前では・・・」


「ね、お願い・・・私をイジメて、叱咤して、ののしって・・・」


「サグメ・・・どうしたの?、おかしいよ?」


「おかしくないよ・・・これが私の本心・・・私はイジメられることで

素直になれるの・・・そうじゃないと快感が得られないんだよ」


「お願い、私を自縛から救って・・・」


若彦はサグメにそうまで言われて無視したり放置する気にはならなかった。

たしかに仕事で疲れてはいたが、自分の欲求を満たす余力は充分残っていた。


若彦はサグメからの誘いがなくても彼女を抱きたいと思っていた。

男と女が一緒に住めば、よほど生理的に合わないかぎり結局はこうなるようだ。

それは自然の成り行き。


若彦はサグメはてっきりどSだと思っていたから彼女の態度を見て驚いた。

Mだったんだ。

イジメられて体が熟成覚醒していく・・・そういう体質の女は人間にも女神

にもいる。


若彦がどSだから、サグメとのセックスの相性は抜群。

だから水を得た魚のようにサグメを可愛がった。

逆にそれは若彦の中に眠っていたアブノーマルに対する目覚めでもあった。


男女が一緒に住んでいて啀み合いながら取り返しのつかない喧嘩をしてお互いを

傷つけ合うカップルもいる。

ふたりは、そうならなくてよかったよね。


結局、サグメは若彦の恋人になった。

すっかり素直になったサグメは生活感を180度転換した。

若彦にとって最良の女神になるために・・・。


そして若彦はSM用グッズをネットでせっせと物色していた。

どSだからそうなるよね・・・まあ同じ趣味、性癖ならなんの問題もないかな。

人にはちょっと言えないだけで・・・。


おしまい。



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本当はエロい女神様。 猫野 尻尾 @amanotenshi

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