最終話(コンテスト用)

 今朝、ミトさんからとある提案をされた。


「そろそろレボル君も狩りに参加しよっか」


「えっ?」


 真っ先に出た言葉はそれだった。


 ミトさんに拾われてから3週間が経った。たしかに役目はサポート全般じゃなくてヒーラー。でも、毎日狩りについていって大勢のモンスターと戦ったあとは、小さな傷を治癒弾ラブ・バレットで治し、依頼書をギルドまで持って行って換金書を貰い、そこから換金所に向かってお金に替えて家まで帰ってきてたじゃないか!


 …………いや、わかってはいるよ。サーシャさんとの話のときもそう感じていたんだから。

 これのどこが憧れのギルドメンバーなんだ! ただの便利屋じゃないか!


 うぅ、涙が零れそうだよ。


「まあまあ、ここから頑張ればいいじゃん。そのためにいろいろ教えてあげようって話なんだからさ」


「精進します……」


「うんうん。じゃあ、さっそく今日から教えちゃうね。森へ行くから支度済ませておいで」


「わかりました」


 とうとう僕も役に立てるようになると思うと、やる気が湧いてくる。

 強くなるために修行を積んだり、鍛えたりするのは魔弾のときで慣れている分、楽しみだ。成長を感じられるのは幸せだからね。


 なによりギルドで1番強いはずのミトさんにご教授頂けるのは光栄なこと。まあ、ここまでミトさんが教え上手な面を一度も見た事がないのは、結果の見えないところに突っ込む怖さがあるけど。


 それから家を出ていつもの森に向かう途中、浮かんだ疑問をぶつけてみる。


「あの、話が変わりますけど、どうして急に教えようと思ったんですか?」


「んー、ちょっとね。姑さんから小言言われちゃってさ」


 サーシャさんか。

 もしかすると、ミトさんのパートナーを辞めさせたあとに他にチームに入れて貰えるようにすこしでも技を磨いておけということなのかもしれない。


 強引な手段は取れないとは言いつつも、ちゃんと裏でことをうまく進めているなぁ。


「まあ、せっかく手に入れたパートナーを失うつもりはないから、レボル君も頑張ってよ」


「もちろんです」


 サーシャさんに認めて貰わなければならない。メイのために。


 僕は成長を止めてはならない。

 ミトさんと出会ってからというもの、停滞していた部分は少なからずあっただろう。


 それならばその遅れを取り戻し、ミトさんの隣にいても許される存在にならなければ。


 そして今日、ギルドメンバーとしての物語の第一歩を踏み出そう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

中編小説「魔弾しか撃てませんがギルド最恐狂戦士にヒーラーとして拾われました」 木種 @Hs_willy

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画