第13話
今日もメイといつものように狩りで目にしたことは話せたが、ミトさんとのことは隠したままで終えた。
どこか苦しそうだと言われて、まだついていくのに精一杯なんだと誤魔化しはしたけれど、長く騙せそうにない。
そもそも僕は嘘をつくのが苦手だし。
「レボル、帰りました」
声を掛ける。
あれ? いつものなら明るさ満点の笑顔でおかえりと迎えてくれるんだけど……。
靴はある。外出中でないなら、どこかの部屋にいて声が聞こえていないのかな。
ここから1番遠いのはミトさんの部屋のはずだから、そこにいるのかも。
換金所で貰ったお金を等分したいのに。
「ミトさーん、居たら返事してくださーい」
大きな平屋の一戸建て。
初めて案内されたときは外から見たものだから、決して広いとは言えない玄関からして2人で住むのに丁度の大きさかと思っていた。
けれどなかに入って見れば奥行が想像の倍はあった。2人どころか5人は住めるほどの部屋数はあったと覚えている。
わざわざそのなかの1番奥にある部屋を自室として使っている理由はわからない。特別大きいわけでも陽の光がよく入ってくるわけでもないに。
「返事はないか」
すこし歩いて部屋の前までついた。
当然なかから音はしない。
「入りますよ」
ノックの後、扉を開けた。
案内してもらったときにはなかまでは入らなかった。パッと見渡すと、左手側にベッドとそこで大の字に眠るミトさんの姿があった。
なんというか、想像通りすぎて……。普段からもうすこし女性らしさがあれば、この無防備な姿に心が驚くんだろうけどね。
「無理に起こす必要もないかな」
換金証明の紙とお金の入った袋を机に置いておけばあとで分けてくれるだろう。
……これ、ミトさんのギルド承認書だ。
机の上にある写真立てに飾られている。発行年は……えっ?13年前?
ちょ、ちょっと待って。僕が今16歳で、もし順当にギルド試験を受けたのだとしたら、今は29歳ってことだよね?
顔を確認しようと後ろを振り返る。
「なにしてるのかなー?」
「わっ!?」
いつのまに目を覚ましていたの。
それに音を立てずに近付いてきてたなんて。
あと顔が怖いよ! 狩りのときに見せる狂喜の表情と違って純粋な怒りが見える怖さが。
「女の子の部屋に勝手に入るものじゃないぞ。ましてや机のものを物色するなんて」
「お、女の子?」
「んー? なにが言いたいのかな?」
「す、すみません!」
さすがに僕でも気付ける殺気の気配。これ以上失言したら確実に怪我を負う。
必死に謝ると、仕方ないといったため息と共に肩にポンと手を置かれた。
「一応、勘違いされたままだと嫌だから言っておくけれど、ギルドには特例ってものがあって、能力の高い子は早くから狩りに慣れるために10歳を過ぎていれば狩りが出来ていたんだよ」
「そうなんですか?」
それは知らなかった。
でも、出来ていたんだよってことは今はない制度の話だろうから、仕方ないか。
10歳で狩りか…………やめよう。自分と比較すると悲しくなる。
「そうだよ。だから私はまだ23歳。ほらっ、肌も柔らかいでしょ」
そういって僕の腕を掴み、頬を触らせてきた。
凄くぷにぷにしていて幸せだ。
「わかってくれたようね。それじゃあ、これ以上はもう見ちゃダメだから、早く出ていって」
「わかりました」
部屋から追い出され、ひとまずリビングに向かう。
それにしても13年か。
つまりは僕とメイがモンスターに襲われたときには既に狩りをしていたということ。
改めて尊敬だな。
それともうひとつ、写真立てのなかに承認書以外に別の紙が後ろに挟まれていたんだけど、あれはなんだったんだろう。
また今度聞いてみようかな。
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