前世ルーレットの罠

幸まる

繰り返す苦行

キリキリキリ……


……ああ、またあの音が聞こえる。


オレは遠くなりそうな意識を何とか保ちながら、その音を聞く。

ゼンマイを巻くような、耳障りな音。

オレの命の終わりを決める、運命のルーレットを回す音だ。


キリキリキリ……


身体は縛られて、身動きは取れないまま、その無情な音と共に、何人もの人間が笑いながらオレの身体を回す。

誰もオレの命を惜しんではいない。

ただ享楽を求め、オレの最期を見ようとしている。



今生は一体何度目のせいだ?

何度生まれ変わっても、オレの運命は必ずここで決められる。

何人もの人間が笑いながら、ナイフを手にオレに迫ってくるのだ。


今回は四人。


前世は何人だっただろう。

その前は?

二人の時もあれば、六人の時もあった。



一体、オレが何をしたというのか。

なぜ何度生まれ変わっても、この苦行を繰り返さなければならないのか。

ああ、今生は何度刺されたら、この息苦しい時を終わらせることが出来るのだろう。



一人の女が、ニヤリと笑ってオレの側に寄り、力いっぱいその手に持ったナイフを差し込んだ―――。




○ ○ ○




少女が樽にナイフを差し込んだ途端、中央に据えられた、黒い眼帯をした海賊の人形がポーンと飛び出した。


「えー、うそー! 一本目ー!?」

「早っ!最速じゃない?」

「アハハー! まぁちゃん早すぎだよー!」

「負けー、まあちゃんの負けー」



日曜日の午後。

四人の家族で遊んでいるのは、樽の形をした容器の中央に海賊の姿をした人形が埋め込まれた、昔から大人気の玩具だ。

樽の周りに24本の切れ込みがあり、そこにプラスチックの小さな剣を、順番に差し込んでいく。

ロシアンルーレットの要領で、ハズレに当たれば先程のように、人形がポーンと勢いよく飛び出すのだ。


「くやし〜い! もう一回しよっ!」


負けた少女が、床に転がっている人形を拾って、樽の真ん中に差し込んだ。

人形を持って時計回りに回すと、キリキリキリ…とゼンマイを巻くような音がする。


「今度こそ負けないからね!」


四人は笑って剣を握り、再び人形に向かうのだった。




《 おしまい 》

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

前世ルーレットの罠 幸まる @karamitu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ