AIメガネ

凪風ゆられ

第1話

「学習するメガネがやっと完成したぞ」

 発明家の父がそう呟いたのを聞いて、近くにいた息子のエムは尋ねた。

「学習?」

「そうだ。このメガネには小さなAIが入っていて、自分で色々なことを学んでいくんだ。例えば、公式を覚えさせれば知らない問題でも自動で解いてくれるし、一度しか言わない上司の言葉も覚えていてくれる」

「へぇ、すごいね父さんは」

「しかし、実験回数が足りなくてな。どうだエムよ。これを使ってみてはくれないだろうか」

 物を作ったりする科学者の父には覚えていない公式も、解けない問題もあまりなかった。そこで息子を使って、最後の実験をしようという魂胆だった。

「うん、いいよ」

「ルールやマナーについては覚えさせているから、エムは勉学を中心に見ていってくれると助かる」

 エムはさっそく、父から借りたメガネを使って数学の教科書を眺め始めた。一通り終わると、次は課題を開く。すると、問題ごとに解法がレンズに浮かび上がった。

「すごいぞこれは。明日は学校で使ってみよう。きっと先生が褒めてくれるに違いない!」

 翌日、エムはメガネを掛けて授業を受けた。運がいいことに先生はエムを指名した。昨晩と同じようにレンズには、解き方と答えが浮かんでいる。

「x=2です」

「おお、よくこの難しい問題が分かったな。すごいぞ」

 褒められて嬉しくなったエムは、今度はテストでも使おうと思った。

 全教科100点を取ればクラス中があっと驚くと考えたのだ。

「そうと決まれば、今日から問題集を読みまくるぞ」

 そして訪れたテスト本番。

「何度も言うがカンニングはダメだからなー。それでは試験開始だ」

 問題用紙を開き、答案に答えを写す準備をする。しかし、

「あれ、何も浮かんでこないぞ」

 なんども掛けなおしてみるが、やはり今までのように答えはレンズに写らない。

 それもそのはず。会話も記録しているAIは、テスト中のカンニングはルール違反だと知っているのだから。


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AIメガネ 凪風ゆられ @yugara24

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