第4話 これがスキル

俺は何してたんだろう ここはどこだ? 分からないけど安心する 

ゆっくり落ちていくようだ 体の至る所に力が入らない

でも良いかなって思った時 辺りが真っ暗になった


 「この力で守って見せろ お前の夢と 仲間を」


誰かは分からないけど 俺の背中を強く 押してくれた


目が覚めあの時を思い出す

ガバッ!! 

(オークはどうなった?アルナは無事なのか?)

周りを見る…見た事ない部屋にいた 周りには植物がたくさん並んでいる

(ここどこだ?なんで俺はベットに…)

少し考えていると部屋のドアが開いた


アルナ「ふー今日も私頑張った!荷物運びって意外と重労働なんて知らなかっ…」

カラン「おはよアルナ」

アルナ「起きるの遅すぎるよ…」

カラン「ごめんね」

アルナが近づきぎゅっとカランを抱きしめる 


アルナ「どれだけ心配したと思ってるの」

抱きしめてる腕に少し力が入る 俺の肩は少し濡れていた


少し落ち着きあの後何があったかを聞いた

あの時俺は確かに首の骨が折れていたがそのすぐ後にフェンリルが来たと言う


カラン「フェンリルが俺達を助けたってことか」

アルナ「えぇ」



アルナ「やめて!!」 ボキッ

首をへし折りオークはカランを投げ捨てる カランの体は強く握られて歪んでいた 


アルナ「カラン!」

そばに駆け寄りたい、だがオークがアルナの方を向き歩み寄る


アルナ「やめて、こないで…私は」

(カランと世界を一緒に見たい…)

そんな声オークに届くわけがない 棍棒を振り上げアルナにめがけて振り下ろす  ブチっ

次の瞬間にはオークの右腕が空に飛んでいた


白銀狼「全く、カラン達が歩いて行った方向から鈍い音が聞こえたと思ったらこんな事になっていたとは」

そこにいたのはフェンリルだった だがどこか光が弱まっている気がした


白銀狼「アルナよ、カランはまだ死んではいない。息が消えかけているが確かに生きている」

アルナ「ほ、本当?」

白銀狼「本当だ、だから手伝え。このオーク普通じゃないぞ」

アルナ「わかった、援護は任せて」

アルナ「 我は止水と化す 」

再び呪文を唱え魔法を展開する、背後の水玉の赤色が強く滲んでいる


白銀狼「ほう、その年で詠唱の短縮ができるとは素晴らしいな」

オークはフェンリルが来てからずっと止まっている 警戒しているのだろうか


白銀狼「では私も魔法を展開するとしよう」

光が強くなり辺りを照らした

白銀狼「 我が豪炎の裁きを受けよ 」

フェンリルの周りに炎が渦巻く その背後には炎で形作られた狼がいた


白銀狼「お前を断罪するのは私自身だ、悔い改め懺悔せよ」

(フェンリルだけで良い気がしてきたわ…)

白銀狼「アルナよ、オークの隙を作れ!私が叩き込む」

アルナ「わ、わかりました!」

水魔法をオークに放ちそれをかわす、オークが一瞬アルナに意識が向いた時

隣にいたはずのフェンリルの姿が無かった


アルナ「あれ?フェンリルがいない」

魔法も光も何も無かった フェンリルが居ない事に安心したのかオークがこちらにくる 


(どこに行ったの?私だけじゃ絶対勝てない)

水魔法を放つがすべてかわされる すると何処からともなく声がした


   「 我ここにあり 」


その瞬間 フェンリルの魔法がオークの首を後ろから噛み千切っていた


白銀狼「隙を作ってくれて感謝するぞ」

アルナの後ろからフェンリルが現れる 

(何をしたの?何も見えなかった、一瞬目を離した時にはもう居なかった)


白銀狼「さてカランを治療しないとな」

アルナ「カランは助かるの?」

白銀狼「アテならある、乗れ」

フェンリルはカランとアルナを乗せて走り出した

(きっと大丈夫だよね、信じてるから)


しばらく道なき道を走っていると大きな木が見えてきた、その木の下に家がある

周りには見たことない植物がたくさん生えている


白銀狼「ギルト!ギルトはおるか!」

そう叫んで家のドアを蹴破る


ギルト「な、なんだ⁉︎いきなり何してるんだフェンリル!」

白銀狼「ギルトよ、この小僧の治療をしてくれ」

フェンリルの背中に横たわる少年をみてただ事ではないと察した


ギルト「後で説明を、こっちに連れてきなさい」

白銀狼「恩に切る、アルナはここで待っていろ」

アルナ「は、はい」

ギルト達が奥の部屋に入って行った、部屋の中にも珍しい植物の数々ある

(あの人は何してる人なんだろ、薬剤師かな?)

部屋の角にあった椅子に座り 大人しく待つ

一方部屋の中では…


ギルト「なんだこの子の傷は、なんで生きているか不思議なぐらいだ」

腕、肋骨、首が折れ、内臓が一つ破裂、何かに思い切り握られたのか体が少し歪んでいる


ギルト「とりあえず、内臓だ。ポーションと治療香を」

(呼吸はかろうじてできている、ならば最初に中の止血をしなければ)

ポーションはこの世界では珍しくはないが貴重なものだ ポーションはそれぞれ

三級→二級→一級の順に効果と価値が高くなる

三級は切り傷程度ならすぐに治る、二級は破損を治せる、一級は致命傷を治せる

今ここにあるのは二級ポーションだ これだけでも売れば半年は暮らせる


ギルト「こんな治療はあなた以来ですねフェンリル」

白銀狼「だからお前のところに来たのだ」

ギルト「全力はつくします」

ポーションを飲ませ 骨などを治療する 折れた骨は少し粉砕しており周りの神経などにのこらないように摘出する 首は綺麗に折られていたため後遺症は残らないだろう、だが…


ギルト「意識は戻らない可能性がある…」

植物状態、体は生きているが意識が戻らない状態。死んでもおかしくない怪我をしていたのだ、意識が戻らなくても不思議じゃない


白銀狼「なんだ意識が元に戻れば良いのだろう?」

ギルト「そうだけどこればかりは待つしか…」

白銀狼「簡単だ」

ギルト「簡単って…まさか!」

白銀狼「もうこの先短くてな、この小僧に与えても悔いはない」

ギルト「…あなたがそう決めたのであれば、自分は何も言いません」

白銀狼「すまないな、お前が助けた命を捨てるようなことをして」

ギルト「いえ、自分もあなたに助けられた身ですので」

白銀狼「そうか…この小僧を助けてくれて感謝する」

カランに向かい 詠唱する


白銀狼「 我ここにあり 」


(本来ならこんなことはしないほうが良いのだろう、残りの寿命をゆっくり過ごした方が良いのだろう。だが私はお前達の夢を追うその心に、魔物に対するその考えに惚れてしまったのだ。)


未来ある若者のために 何かを賭けることは間違いだろうか そんなことは無い

それを託すのは本人の意思だから 

(感謝するぞカラン、アルナ。最後に会えた人間がお前たちであったことを。)


白銀狼「この力で守って見せろ、お前の夢と仲間を」


辺りが大きく光る、それと同時にフェンリルの遠吠えが響く

光が収まった時、そこにフェンリルの姿は無かった


アルナ「それで一週間経って今に至るってわけよ」

カラン「フェンリルが俺に…」

(あの時背中を押してくれたのフェンリルだったのか)

カラン「ありがとう、フェンリル」

胸に手を当てて強く握りそう言った


ギルト「何やら話し声が聞こえて来ると思ったら目が覚めたんだね」

扉の前に 少し髭が生えた男性がいた


ギルト「初めましてカラン君、自分はギルトって名前です以後お見知り置きを」

カラン「は、初めまして。命を助けてくれてありがとうございます」

ギルト「感謝ならずっと看病していた彼女とフェンリルに、自分だけじゃ意識が戻らなかったかもしれなかったから」

ありがとうとアルナにも伝えてギルトに問う


カラン「フェンリルは消えてしまったのでしょうか」

ギルト「いや、フェンリルはいるよ。君の中に」

カラン「俺の中に?それは思い出とかそう言うものですか?」

ギルト「いいや、君の中に確かにいる」

ギルトがこちらに歩み寄り椅子に座って説明する


ギルト「君の中にはフェンリルのスキルが入っている」

アルナ「スキルが入ってる?」

ギルト「そう、フェンリルのスキルの名は“英雄“。それがフェンリルが英雄と言われていた所以だね」

カラン「“英雄“…」

(だからあの時私が私だからって言ったのか)

   

  私が英雄(私)だからだ


ギルト「スキル持ちは貴重だ、だから何をしてでも残しておきたいと思うのが普通だ。体調が戻り次第練習してみるといいよ」

カラン「わかりました」

アルナ「じゃまずはご飯ね、数日食べてなかったから白湯でも用意するわ」

そう言って部屋から飛び出し台所に向かって行った


ギルト「さて、自分も用事があるので抜けさせてもらうね、ゆっくり休んで」

カラン「はい、本当にありがとうございました」

体調はゆっくりと戻っていった、アルナの料理やギルトさんの薬のおかげだろうか。

それから四日たった


アルナ「カラン〜準備できたわよ〜」

カラン「じゃあいくぞ」

今はスキルの確認、練習をしている


カラン「 我ここにあり 」

そう唱えるとカランがいなくなった 否 影に沈んだのだ

しばらく待っているとアルナの影から姿が現れる


アルナ「すごいわねその能力」

カラン「あぁ、俺には勿体ないぐらいの力だ」

スキルには魔力のように無くなったら使えないとゆうものはない、だが集中力がごっそりと削れる


カラン「これがスキル…」

アルナ「その力って誰かに渡すことってできるの?」

カラン「いや、そんなことできる気がしない。フェンリルが特別だったんだと思う」

(そもそもスキル自体が特別なものだ 先生が言っていた選ばれるしかないとはこうゆうことか)

じゃあ神の愛とは何なのだろうか カランにスキルを与えたのはフェンリル自身だ 今まで教えられてきたことが矛盾する

(今は考えないでおこう)


アルナ「あの時フェンリルが私の後ろから出てきたのってこうゆう意味だったのね」

カラン「なぁアルナ、あの時のオークっておかしかったんだよな?」

アルナ「えぇ、フェンリルが普通じゃないって。ギルトさんにもその事を伝えたら確かに変だって言ってた」

カラン「確かにあの時戦ったオークはおかしい、普段いない場所にいたし速さが尋常じゃなかった。それにあの黒いモヤは…」

アルナ「今はそのスキルの練習に集中しましょ」

カラン「…そうだな」

アルナと対面し魔法とスキルの練習をした


カラン「 魔を燃やせ 」

アルナ「 我は止水と化す 」

二人が詠唱し模擬戦闘を行う 二人の実力はそんなに変わらない だがスキルが入ればべつだ


カラン「 我ここにあり 」

アルナが水玉を放つもカランが影に入りそれをかわす 次に出てきたのはアルナの右後方の木の影からだ 


カラン「燃やせ!」

アルナの足元を狙いアルナがそれを飛んでかわす、その時にはカランはすでにいなくなっておりアルナの影から出てくる、その右手には剣を構えておりアルナの手窪を掴み首元に剣を添えた


カラン「俺の勝ちだな」

アルナ「そのスキルずるいよ」

アルナが手を地面につけて呪文を唱えた


アルナ「 朽ず生に満ちよ 」


その瞬間カランの足元から木の根っこが絡みつく、その隙をアルナは見逃さず

拘束からぬけ水魔法を放つ 


アルナ「穿て!」

カランは魔法をモロに当たりさらに根っこがカランの体を縛っていく


カラン「この魔法ズルすぎる」

カランを根っこが拘束し空中に晒す このスキルは影に触れないと発動できないらしい


アルナ「私の勝ちね」

カラン「お前が樹魔法を使えるなんて初めて知ったぞ」

アルナ「カランが治療してた後に練習したのよ」

ギルト「二人とも、すっかり元気なようだね」

アルナ「ギルトさん」

ギルト「二人とも明日にはもう旅に出ても問題ないよ」

カラン「今この状況で言われても…」

カランはまだ空中に晒されている


アルナ「あ、忘れてたわ。ごめんなさい」

ギルト「仲良いね君たち」

カランを地面に降ろしカランが駆け寄る


カラン「幼馴染なんです俺たち」

ギルト「そうなんだね、仲がいいわけだ」

そう言いながらポケットから紙を出した


ギルト「明日この森をぬけた後にこの紙どうりに進むと王都につくよ、フェンリルから聞いたけど世界を旅してるんだってね」

アルナ「はい、世界のいろいろな場所や生物とか見てみたくて」

カラン「知らないところを冒険するのが俺たちの夢なんです」

ギルト「そっか、ならまずは情報だね。王都にはいろいろな情報があると思うから調べてみるといいよ」


カラン「何から何まで色々ありがとうございます」

ギルト「別に構わないよ。あ!後これも持って行ってね」

カバンを渡され中を覗いてみると食料やポーションが入っていた


アルナ「ポーションだなんてこんな高いものいただけないです!」

ギルト「そのポーション自分が作ってるから別にいいんだよ」

ギルト「フェンリルが君たちを助けたんだ、ここで見捨てたりしたら自分が怒られるよ」

カラン「わかりました、ありがたくいただきますね」

ギルト「今日はもう休んで明日の旅に備えなさい」

カラン、アルナ「はい!」


???「面白そうなことが起きそうだなぁ?いや面白くするのが俺の生き甲斐かぁ〜」


◻︎◻︎が現れたと噂が流れた、各国がその噂に動き始める

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