第9話 大団円
頼光も結局自分から抜け出せず、結界の中に自ら入っていたようだ。これは、意識してのことで、
「こっちの方が楽なのでは?」
と感じたからであった。
では、真田はどうだろう? 彼は、
「神仏櫓」
に向かったのだ。
彼は自分でも意識していたが、躁鬱症だった。躁鬱の鬱状態になりかかった時、今を迎えたのだ。
他の三人が、うまく抜けられたかどうかわからない。だから、自分も抜けられるかどうか分からないと思っていた。
彼は、他の三人など、どうでもいいと思っていた。かといって、
「自分さえよければ」
とも感じていない。
神仏櫓にも結界が張ってあった。
その色は、
「真っ白」
だったのだ。
真っ白なために、他のところが、真っ黒で、
「見えるはずのものが見えない」
という状況になっている。
ただ、逆に、
「今まで見えていなかったものが、見えてもくる」
ということであった。
実際に見えてきたものは、城址があった。いつの時代のお城なのかは分からないが、お城の中に、食料もいろいろと揃っているようだ。
中には、先ほど結界に落ち込んだ3人もいた。
その3人が、真田を待っている。
「どうして、皆ここに?」
と聴くと、
「さっきあった結界を超えると、ここに来たんですよ」
というではないか。
「結界というものを皆感じたのかな?」
と真田は思うのだった。
それを察してか、3人とも、それぞれに、結界のことを話し始めた。
「あの結界は、俺たちがそこを通る時に、この城を見せてくれるための、パスポートのようなものなのかも知れないですね」
と口々に言っていて、その内容は、こういうことに落ち着くのだろうと思うのだった。
ただ、皆それぞれに、毒というものも意識したようで、頼光が、コンパラトキシンであり、もう一人は、
「ハチの毒」
だった。
ただ、これは、毒によって人が死ぬわけではなく、毒によってできた身体の中の抗体と反応して、ショックを起こすという、
「アナフィラキシーショック」
というものが影響しているということである。
これは、精神疾患の人間が、
「まわりに伝染する」
という発想からくるものだったといってもいいだろう。
精神疾患の病状が、実は他の3人にも移っているということを、誰が気づいているだろう。
結局、こういう強盗のような犯罪を犯したわけであるが、それなりに事情もあり、その事情を、
「見えない力」
が判定し、その合否を判断したということになるのだろう。
この神崎村というところは、そういう魔力のあるところで、この村を選んだということがそもそも、
「選んだ時点で救われていた」
と言っても過言ではないだろう。
ただ、彼らがここで助かって、
「さらにこのあと、どのような運命をたどるか?」
ということは、誰に分かるということではない。
「ここまではよかった」
ということであるが、
「最後に笑うのは誰なのか?」
というと、本当に、
「神のみぞ知る」
ということになるのだろう。
( 完 )
神のみぞ知る 森本 晃次 @kakku
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