エリアプラス、生まれる前の記憶

@tablegood0212

第1話

 科学技術の進歩は、月旅行をビジネスにするなど、宇宙開発の発展へとリードしていたが地球の未来は混沌と言う状況を迎えようとしていた。人類の存亡をかけた挑戦へとシフトしつつあったのです、資本主義と専制主義の争いは貧富の格差を生み、貧困は人々を戦争へと導いていく。富をめぐる戦さは各地域で起こり、NATOや国連の機能は失われつつあった。米国による世界への安全保障の関わりでは、世界の平和は守れず、中国とロシア、北朝鮮が秘密裏に培養した生物兵器が世界に蔓延して、世界の人口は減少の一途を辿っていた。世界の経済活動を持続させる事は不可能であり、米国経済時代の終焉を予感させつつあった。当然金融市場は暴落して、物価が上昇するインフレによって各国の紙幣の価値は失われつつあった。米国大統領も貧しい国を排除する様に動いて、自由と平等は影を潜めている。世界は閉塞感に包まれていた、そこで注目を集めているのが地球の避暑地として、セレブが利用していた月のミュージアムである。新しい居住地区として地球から人類の移住が始まろうとしていた。



 世界に蔓延している、細菌兵器の影響をTokyoも受けていた。ゴーストタウンの様になっていて、地方への移住が始まっていた。東京に集中していた人口も政府の方針により分散化が進んでいる。同時に進められていたのが、月にある日本ミュージアムへ日本人が生活拠点を移すのである。何故この様な活動がおこなわれているかの説明については、その当時の日本人の理解を超えている所があるが、欧米に右にならえの政治方針を打ち出している日本政府に疑問を投げかける事が出来る民間人は日本に存在していなかった。その第一陣の輸送の日程が決まりつつあった、その人選はマイナンバーカードによる抽選に委ねられたのだ。


 僕の祖父は、その素晴らしいチャンスに偶然当選して、家族で月に移る事が決まった。来週に大型宇宙船で輸送が決まった翌日、地球最後の日を描こうと、明治からある家の墓に足を運んだ。家の墓は、中学校の山手の丘の上にあり、辿り着くには森の中を移動する必要があった。森の先には湖があり、祖父が訪れた日には天候も良く、朝日がキラキラと湖に反射した。祖父は墓に続く森の道から先に湖が見える山路を地球で最後に見た景色として絵画に描いた。それは、ありきたりな日本の田舎の何処にでもある風景だった。



 僕は、祖父の息子の嫁のお腹の中にいて、悪魔と対話している。


 悪魔は僕に、「どんな絵画が描いて欲しい?」と話す。


 僕は、「何のために必要なの?」と答える。


 「貴方が文章を書く為よ、早く言って」と悪魔は言う。


 「分かりやすい、自然の中を歩く絵が良いな」と伝えた。



 以上は僕がこの世に生を受ける前の記憶である、僕がこの家に誕生すると確かに一枚の絵が洋間に飾ってあった。僕はエリアプラスだなと思った、父に絵の事を尋ねると、祖父が地球を離れる前に、日本の姿、僕の故郷を描いたものだと言う。僕は今、月で暮らしている。現在の常識として地球の大部分の人が月で暮らしている、地球はロボットが月で暮らしていく、日用品を生産している。二酸化炭素が増加してオゾン層を破壊された、有害な紫外線によって人間が地球で暮らしていく事は不可能になっているのだ。僕は宇宙の日本地区のコロニーから地球を眺めているのである。そして、生まれる前の記憶の言う通りに、祖父の描いた地球最後の景色を見ながら、物語を書いているのだ。しかし、今は亡き祖父に僕の言葉が伝わっていたのかは分からない。それよりも地球のありふれた景色を訪れてみたいと強い憧れを抱いているのである。

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