14.自己紹介

「おかえりーサーヤ。えっと、その仮面の人が来てくれた人?」


 案内された先には二人、推定、槍使いと魔術師がいた。そのうちの魔術師風の少女がサーヤに気づいて話しかけてくる。ウェーブがかった明るい赤髪に燃えるような赤い目。元気そうな雰囲気の女の子だ。


「ただいま、ミツキ。こちら募集に応えてくたアイシオさん」


「はじめまして。アイシオです。武器は弓。現在のレベルは10です。よろしくお願いします」


「僕はミツキ。魔術師で、レベルは15。よろしくね」


「八野サラミ。呼ぶときはサラでお願い。獲物は槍でレベルは14。よろしく」


「改めまして、サーヤです。使っている武器は剣でレベルは14です。よろしくお願いします。」


 定型文的な自己紹介を順番にしていく。全員俺よりレベル高いなぁ。


 サラミ、もといサラは方ぐらいまでの黒髪を後ろでまとめていて、防具はサーヤよりも少ない。あと、背が高い。サーヤとミツキが(アバターの)俺と変わらない、160弱ぐらいなのに対し、サラは170㎝くらいある。


 サーヤが正面を受け持って、サラが横合いから遊撃的に攻撃。ミツキが魔術でダメージを稼ぐって変せいだろうか。だとしたら楽だな。俺が入っても特に難しいことなく連携ができるだろう。後ろからチクチクしてればいいだけだからな。


「ねぇアイシオさん!その仮面ってどんな装備なの?この街じゃ見たことないんだけど」


 ずっと気になっていたのだろう。自己紹介を終えるなりミツキが身を乗り出して聞いてくる。


「これですか?これはこの王都で買ったんですよ」


「へー、どこで?あと無理に敬語にしなくてもいいよ。僕もしてないし」


 別に無理はしてないんだが、なしでいいというならそのほうが楽だ。お言葉に甘えさせてもらおう。


「じゃあそうさせてもらうよ。王都の向こうのほうに露店が並んでる場所があるのは知ってる?」


「ああ、あのガラクタがガラクタが並んでるところだな」


 サラがなかなか辛辣な評価を口にする。まぁ実際、ガラクタ以上のものはほとんど見なかったが。


「そう、そこだ。あそこからさらに路地に入ったところにこれが売ってたんだ。漂流物って言って先の街から流れてきたアイテムなんだと」


 軽く漂流物がやってくる経緯何かを説明する。


「なるほど、デメリット付きの上位アイテムが手に入ることがあると。ということは、その仮面もなにか欠点がるということですか?」


「ああ、かなり大きいデメリットがある。それに見合うメリットもあるけどな」


 サーヤの疑問に答えて仮面アルキミアマスクの効果を教える。


「呪い……てことはその仮面って外せないんだ。効果が強いのはわかるけど確かに安易に装備したくはないね」


 サラがそう感想をこぼす。思ったより驚きが少ないな。アクセが不壊なこととかを知らいなとこんなもんなのかな?


「話は変わるんだけど、3人ってもともとパーティ組んでるよね?」


 仮面の話を切り上げ俺は気になってたことを聞いた。


「そうだよー。学校の友達で一緒にアルテラを始めたからね!」


「ええ。なのでもともと3人でパーティを組んで遊んでいました。えっと、何か問題がありましたか?」


 サーヤが怪訝そうに聞いてくる。


「いや、固定パーティで組むなら3人の誰かが〈料理〉をとればいいのになと思って」


 そう、俺が気になっていたのはそこだ。「〈料理〉持ちでレベルは問わない」という募集は、パーティに〈料理〉だけが足りないということだ。今後絶対に必要になるスキルなのだから、メンバーの誰かがとればいい話だろうと思う。


 1SPをどうしても節約したいというのは、今後のことを考えるとあんまりいい選択にも思えないし。


「ああ、〈料理〉持ちはすでにいるんだよ。ほんとは4人で始める予定だったんだけど、一人が早めにプレイできる環境が揃っちゃって、待たせるのも悪いから先にやってもらってるんだ」


 サラが俺の疑問に答える。


「なるほど。その一人が〈料理〉持ちで、1SP余分に消費するのがもったいなから臨時パーティを組むことにしたと」


「はい、そうなんです。その子は今、東にある海を目指してプレイしているので私たちが追いつく形で合流するつもりなんです」


 序盤の短距離のためだけに1SPを払いたくない。なるほど道理だ。


「なるほど、理解した。それで、このままもう出発するのか?それとも連携の確認とかの準備をするか?」


「いえ、このまま出発するつもりです。道中の”イステン湿地帯”の適正レベルは12、私たち3人だけでも戦闘だけなら問題ないですので。ただ、知っての通り王都から次の街へと出発しているプレイヤーが既に大量にいるため、中継の村やセーフポイントでの食料や消耗品の補充が難しくなる可能性があると聞いて、アイシオさんにはいわゆる兵站の役目をお願いしたいんです」


「わかった」


 要するに俺が〈料理〉を持ってることでインベントリに余裕ができるので、そこに多めに消耗品を詰め込める。俺に期待される役割は端的に言えば荷物持ち的なものだ。まぁ楽できるならいい。


 それよりも気になるのが、道中で補充が難しいってところだ。人が多すぎてってのを考えると施設の渋滞とかも考えられるが、もしかしたら売り切れとかの可能性もある。食料はプレイヤー全員にとっての必需品。それが売り切れるってのは結構なことだ。通常、そういうのは無限の在庫があることにしたり、プレイヤーが多いときは一時的にリソースの数値を引き上げるとかの策をとるんだが、いかんせんこのゲームの運営はCC:Gだ。俺のイメージだとCC:Gってそういうのを避けがちなんだよなぁ。よく言えばこだわり、実際のところは悪癖として、CC:Gは世界観を無視した運営上の調整ってのをかなり忌避している。


 うーん、これはトラブルが起きそうな予感。いや、需要が容易に予測できるんだから、商人プレイをする奴も出てきたりするか?なんにせよ早めに王都を出る選択は正しかったようだ。


 その後、戦闘時の役割を口頭で確認し、トートまでのタイムスケジュールを組んでいく。


 今日は、ミツキが10時にログアウトしなければならないということで、それまでに王都とトートの中間にある村まで行って、明日また残りの道のりを攻略する。そういう予定になった。


「では、短い間ですがよろしくお願いします。アイシオさん」


「こちらこそ、よろしく。三人とも」

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