東奔
13.初めからできることが多すぎると迷う
再ログインした。レベルキャップ開放をした後、一度ログアウトして早めの晩御飯と、軽く調べ物をして戻ってきた。レベルキャップ開放と同時に新たにできることが増えているようだったので、関連する情報を集めてきたのだ。
「まずはスキルのアップグレードについて」
レベルキャップ開放をした後、〈弓術〉〈剣術:短剣〉〈魔術:水〉にアップグレード可能の表示が現れた。
『0SPを消費することで〈初級弓術〉を〈弓術〉にアップグレードできます』
要するにSPを消費することでスキルを進化させることができるらしい。3つともやっておく。
「初級から無印へは機能の紹介でタダだけど、これ以降はそれなりにSPを消費するし、進化先の分岐もある、と」
いわゆるスキルツリー的なやつだ。各スキルのアップグレードにもSPを使うし、新規に獲得するにもSPを使う…これは将来的に足りなくなるやつだな。
「いや将来的にと言わず、現在形で全然足りてないが」
なんせスキルアップグレードの開放と同時に、習得可能なスキルも増えてるのだ。それも結構な数。
「生産系のスキルがないのはおかしいと思ってたけど、ここで増えるのか」
〈鍛冶〉、〈縫製〉、〈木工〉、〈建築〉etc…
生産スキルだけでかなり細かくスキルがある。
そして当然、戦闘系のスキルも増えており、かなり強そうなスキルもある。その分SP消費も重くなっているが。
「5SP消費のスキルとかとってる余裕あるのか……?」
レベルアップでもらえるSPが2で、現状の最高レベルである99までは変わることがない。アップグレードにどれだけSPが要求されるかわからないけど、余裕があるとは思えないよなぁ。これはレベル以外でのSP入手手段がありそうだ。
それで増えたスキルについてなのだが、王都を出る前にいくつかとっておこうと思っている。増えたスキルが多すぎてすぐには精査できないので、wikiでおすすめスキルをみてすぐ必要そうなものを選んできたのだ。
「〈射撃強化〉、〈料理〉、〈錬金〉。今すぐとりたいのはまずこいつらだよな」
ぶっちゃけいくらでも欲しいスキルはあるのだが、その中で優先度が高めの3つをとっておく。
〈射撃強化〉は火力に直結するスキルで、〈料理〉〈錬金〉はさっき調べたときにおすすめされていたので選んだ。どちらもゲームをプレイするうえで役に立つスキルなのでとっておいて損はない。
「よし!もう王都に用はないはずだな」
チュートリアルも終えたし、さっさと次の街に行ってしまおう。夜になったことでプレイヤーの人口も増えてきてるし、さすがにまだ人が多すぎてプレイに使用がきたすレベルではないが、多分これから新規プレイヤーは増える。できるだけ早くこの街を出るのが得策だろう。
「消耗品とかの補充をしたら、冒険者ギルドに行くか」
買い出しをした後、〈料理〉の試運転がてらパンとクッキーを作ってみたあと冒険者ギルドへと向かった。
「結構いるな―。いい感じの募集があるかどうか」
冒険者ギルドの一角、プレイヤーたちが集まっている区画へと向かう。
臨時パーティの募集を探すためだ。
ソロプレイをいきなり捨てることになるが、まぁ俺はソロ専ってわけでもない。必要があれば臨時パーティぐらい組む。ただ基本ゲームだと、興味があることにふらふら寄っていく
今回は急いで王都を出ようとしていることもあって、若干レベル的に不安があるのでパーティ、できれば前衛を受け持ってくれるメンバーが欲しいと思っている。
「ナミナの村までー回復持ち募集してまーす」「ウェンストン山脈の攻略メンバー募集中です!レベル40以上の人!」「キノスタの奥を探索します。前衛の人募集中ー」
VRMMOで臨時パーティを募る方法は大体3つ。一つはゲーム内外の電子掲示板を利用すること。二つ目に、ゲーム内のマッチング機能、もしくは募集機能を利用する。このゲームのばあい募集要項を書いた紙を掲示板に貼る形らしい。近づくと普通に手元のUIで読めるので雰囲気づくりって感じだ。で、3つ目は今周りで呼びかけてるように、直接声をかけたり呼びかけたりする方法。
それぞれの方法に良し悪しあるが、今の俺のできるだけ早く王都を出たいというニーズには3番目の方法が一番合っている。前二つはどうしてもやり取りに時間がかかるからな。
というわけで、募集をしている人たちの呼びかけに耳を傾ける。拾うべき条件は、王都以外の街に行くこと、できれば南以外が望ましい。なぜならゲームの誘導に一番素直に従うと南の”サザミ”に行くことになるからだ。つまり、今あるいはこの先、王都を出るプレイヤーの多くが南を目指すということだ。人ごみを避けて王都を離れようというのに、追いかけっこをしていては意味がない。なので南以外に行きたい。
森、山、沼地の攻略、南への同行、
なかなかよさげな募集がない。こちらから募集を掛けたほうが早いだろうか?
「…料理もちー……トート…」
!今の声、どこからだ?!
トートはここから東にある町のはずだ。
「こっちか」
「…トートまでー。料理持ちの方ー、レベル問いません。剣、槍、魔術に追加で一人。トートまで同行できる方ー」
「すみません」
「はい。っ!?」
おそらく剣士であろう女性プレイヤーに声をかける。茶髪のショートヘアで、革製の防具を胸と腕に着けている。
条件的に問題ないことを確認してすぐ声をかけたのだが、なんかすごい驚かれた?
「あ、えっとパーティ参加ですか?」
「はい。〈料理〉もち。レベル10です。入れますか?」
すごい顔を見てくるなと思ったけど、そういえば今俺、仮面で顔を隠してる状態なのか。急に知らない仮面野郎が声をかけてきたらそりゃ驚くか。
「はい。大丈夫です。行先は東の街”トート”まで。食料担当をお願いしたいです。大丈夫そうですか?」
「ええ、問題ないです。えー、アイシオっています」
「サーヤです。じゃあほかのメンバーのところに案内しますね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます