12.チュートリアル終わり

 結局、次の「仲間を呼ぶ」コマンド阻止は間に合わなかったが、来た援軍の数が5匹に戻ったことで何とかなった。ついでにホブと無印のゴブリンの違いはよくわからなかった。たぶん攻撃性能が上がってたんだろうけど真っ先につぶしたので。


『経験値が規定値に達しました。レベルキャップ開放クエストが発生します』


 戦闘終了と同時にそんなアナウンスが流れる。


「レベルキャップ?あるとは知ってたけどレベル10で?」


 今後、レベル10ずつでレベルキャップが来たりするのか?だとしたら面倒だが。なんて考えながらクエスト一覧を開く。


「ああ、なるほど。要するにチュートリアル卒業イベントか」


 クエストの内容としては、今までやってきたチュートリアル用のクエストを全部クリアしてねって感じだ。


「開放クエストを終えると、ステータスリセットができなくると」


 他にも、習得可能なスキルの選択肢が増えたり、PvP要素が解放されたりするらしい。初心者卒業ってかんじだな。


「んで最後に残ってるのがジョブにつく、就職か」


 そういやステータスにJobの欄があったな。就職方法がわかんなかったから無視していたが、クエスト説明に書いてあった。


「冒険者ギルドに行けばいいと」


 はぁ街に戻らなきゃならんのか。30分も戦闘してないんじゃないか?あれ、そうなるとゴブリンの経験値効率めっちゃいい?索敵時間が必要ないのがよかったのか、多勢を相手にするとボーナスがあるのか。


「まぁいいや、ログアウト前にちゃっちゃと就活してしまおう」


 というわけで街に戻るのだが、さすが来てすぐににまっすぐ戻るのは何か癪なので、軽く採取をしておいた。『赤ヴァーシュの実』っていう小さくて赤いパイナップルみたいなのが、甘くておいしかった。


「ようこそ冒険者ギルドへ!ご用件をお伺いいたします!」


 冒険者ギルドについたはいいが、どうすれば就職できるかわからなかった俺は、とりあえず受付に向かってみた。


「Jobにつきたいんですけど、ここでできますか?」


「はい。当ギルドはJobシステムの提供を行っております。ギルドに登録していただくか、利用料をお支払いいただくことでご利用になることができます」


 ふーん。今のいい方的にJobシステムは冒険者ギルドの専売特許じゃないっぽいな。というかギルドについてそんな詳しく知らんからな。


「えー、ギルドについてなんですけど、この冒険者ギルドもそうなんですけど、ほかのギルドのことも知らなくて。簡単でいいので説眼してもらえますか?」


「はい。もちろんです!ギルドとは特定の技能を持つ者たちの互助会のことです。冒険者ギルドは広く戦闘技能全般を持つもの。ほかには剣術に特化される方々が所属する剣術ギルド、テイムの技術を持つ方々のテイマーギルドなどがあります。互助会といったようにギルドに所属されている方々には優遇があり、冒険者の皆様は冒険者ギルドによる身分保障が受けられます」


 身分保障……逆に言うとギルドに冒険者ギルドに入らないと身分不詳の不審者になるってことか。当たり前か。この世界での俺は生後6時間弱の異邦人だしな。


「所属する場合の条件などはありますか?」


「ギルドによって異なります。当ギルドでは入会時の情報登録以外は会費やノルマなど一切ございません」


 まぁ、ゲーム的にほぼ入ることになるギルドに、ノルマがあるってことはないか。


「ちなみに、掛け持ちとか脱退とかについてはどうなってますか」


「当ギルドから何かを制限することはありません。掛け持ちをする場合は、相手ギルドの規約などによりますのでその時はご確認ください」


 確認すべきことはこれぐらいか。特に問題はなさそうだな。


「じゃあ、登録をしたいんで、お願いできますか」


「はい。ではこちらに手を置いてください……はい、ありがとうございます」


 出された、なんか魔術的な意味ありげな文様が描かれた板に手をのせると、一瞬光を発して杉の戻った。


「情報の確認ができました。最後にこちらにサインをお願いします」


「はい」


 多分、注意事項とかが契約とかが書いてあるであろう紙を渡される。その下のほうにある署名欄にサインをする。せっかくだし雰囲気重視でアルファベットで『Aishio』にしておいた。


「以上で登録は終了です。Jobの登録はしていきますか?」


「あ、はい。お願いします」


「ではあちらの扉へとお進みください」


 そういって一枚の扉を示す。


「あちらの扉の向こうでJobシステムが利用可能となっております」


「わかりました。ありがとうございます」


 そういって受付から離れる。示された扉のほうに視線を向ける。


「人が並んでる様子はない。プレイヤーごとに部屋の先が変わるタイプかな?」


 街の様子的にJobのために人が殺到していてもおかしくないと思ったが、扉に入っていく人はちらほらいても並んでいるいる人はいない。


「まぁ入ってみればわかるか」


 扉の先の空間は案の定、自分しかいない。個別空間に転送されているらしい。


「なんか微妙に世界観に合わない部屋だな」


 電子機械があるとかではないのだが、材質とか設計様式とかが嫌に現代臭い。それゆえに、かえって浮いているのが部屋の中心にある水晶だ。水晶とそれがおかれた台座だけが、ファンタジー世界らしいというか世界観にあっている。どういう意図があってのデザインなんだろう、いろいろ想像できるが、今答えが出せる類のものじゃないだろう。


「この水晶がJobシステム用の端末ってことでいいのかな」


 そういって水晶に触れると、ステータスウィンドウが開かれる。


 ---

 PN:アイシオ

 Lv:9 (SP:7)

 Job:無し

 種族:ヒューマン


 HP:38/38

 MP:45/45

 STM:100/100


 STR:25

 VIT:18

 AGI:20

 DEX:30

 INT:21


 スキル:言語理解 初級弓術 初級剣術:短剣 初級魔術:水 魔術:弓 ATK増強 DEX増強 MP増強 広角視野 鷹の目

 ---


 現在のステータスはこんな感じだ。開いたステータスウィンドウからさらに、就職可能なJob一覧が出てくる。


「いま選べるのは旅人だけか」


 弓師とか魔術師とかそういうのはまだらしい。この旅人ってのがニュービーとかノービスみたいな、いわゆる初期職業なんだろう。


「じゃ旅人になってしまうか」


 選択肢がないので迷うことなく旅人を選ぶ。


「これでチュートリアルは全部終わりってことでいいんだよな」


 そういってクエストウィンドウを開く。最後のクエストがクリア扱いになり、開放クエストもあとは完了を選択するだけの状態になっている。


「これで完全初心者は脱したかな」


 そういってクエスト完了に指をあてる。


『おめでとうございます!レベル10になりました!』


『称号:旅人 を獲得しました』

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