ああ我が愛しのマロングラッセ
”ちょっと遠方への仕事から帰った親が買ってくるお土産”と言えば、皆さんは何を思い浮かべますか?
伊勢の近くなら赤福?関東圏なら東京ばな奈?変わり種では話のネタに北海道のジンギスカンキャラメルなんてのもあるやも知れません。そもそも出張などのない職業の場合もありますし、そこら辺は多種多様でしょう。
今日は私にとってお土産の定番だった、マロングラッセというお菓子について書いてみようかと思います。
おそらくマロングラッセがどういうお菓子かご存じの方は「あれ?」と疑問に感じていることだと思います。「季節感とか、お土産らしい名産品て感じが全然ないやん!」と。まあまずはスルーしていただいて、知らない方向けに説明から入るとしましょうか。
マロングラッセは名の通りマロン、即ち栗を使ったフランスのお菓子のことです。むき栗を砂糖で丁寧に煮詰め、きれいな艶を出したもの、と説明すれば間違いはないでしょう。大きめの地方都市なら、デパ地下の洋菓子店を少し探すだけで簡単に手に入るような、知名度こそメジャーな洋菓子に劣るとはいえ、決して珍しくないお菓子です。
いくらでも他に子どもが欲しがるものがある場所への出張でも、私は毎回親にマロングラッセを帰りの土産にねだりました。当然、何故そんなありふれたものを?という話になるでしょう。
勿体ぶるものでもないのでアッサリ理由を白状しますと、シンプルに『あの時の自分にとって、世界で一番美味しい食べものだったから』です。
きらきらした包みを破ると、うっすらと糖衣の艶がある大きな栗が一粒。子供の小さい口に一気に頬張って、口の中でほろほろと崩れていく甘みと香りを楽しむ。そもそも食事という行為が余り得意ではなかった当時の私としては、数少ない自分から進んで摂りたがる食べものでもありました。『親が遠くで買ってきてくれた』という条件付けが、より非日常を意識させて特別な食べ物だと思わせた面もあるでしょう。
今では成長して、人並みにはものを食べるようになりましたし、マロングラッセだっていつでも好きに買えるくらいの余裕は(さすがに)あります。数年前にふと思い立ち、マロングラッセを自身で初めて購入しました。あの時と変わらない金の包み紙に、あの時よりずいぶん小さく見える艶のある栗が一粒。
そうそう、こんな見た目だったよなあ、何年ぶりに食べるかなあ、十年とは言わないぐらい久しぶりだよなあ、なんて照れ隠しに呟きながら、懐かしさと!期待で!胸を膨らませ!幼かった当時のように!一口で頬張りました!
「…………………………まっず」
成長すると味覚って変わるよねって話です。はい。
転ばぬ先の石、物書きも歩けば杖にあたる 石末結(いしずえ むすぶ) @descendant-stone
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