水川

イタチ

第1話

おわり


終わりとは突然、訪れるれるものだ

私と、妻の紗栄子が、結婚し、このマンションに、引っ越してきたのが、今年の春である

彼女とは、とある会場で、出会って、その飲みの席で、付き合い始めた

中であった

築二十年は、する、このマンションの内部に、入れば、まるで、夏が、除けるように

初夏にもかかわらず、このコンクリートの使われた建物は、氷室のように、日陰は、じっと、涼しく

私は、エレベーターに乗り、毎日、乗り降りしている、階のボタンを押すと、オレンジに点滅した二階から目を離した

エレベーターのドアから出て、私は、外が見える中間地点の廊下まで、歩くと、その一室

端川の文字の前で、目を止めて、立ち止まった

「花川 紗栄子」

私は、そう、黒く印刷された小さく細い表札から、目をそらせて、鍵を、開けて、中に入る

玄関には、珍しく、妻の靴が、置かれてはいなかった

確か、加河の堤防沿いを、歩いていた時に、見つけた、靴屋で、買ったはずである

この時間帯、私が、帰ってくるのを、知って居るのだろう、私が何も言っていないにもかかわらず

彼女が、この部屋に、居なかった、記憶はない

買い物であろうか

それとも、何か、病気や、事故の類だろうか

私は、鞄に、顔を、下げて、中から、携帯電話を、取り出したが、彼女から、何の通知も連絡の類も、送られては、居なかった

メールや小文を、投稿するようなアプリも、見てみたが、部屋の暗い廊下の中

これと言った、物は、見つけられない

もともと、メールも滅多に、しないような、人なので、それは、仕方がないのかもしれないが

私は、いつまでも、玄関にいることに気が付き

そして、もしかすると、何か、書置きの類を、残しているかも知れない

そう思って、そこで、靴を脱いで、廊下を、歩く

木に似せた廊下は、木目にもかかわらず、ざらつきもなければ、滑るような、硬さもない

軽く沈み込むような、弾力を、私は、その時感じられた

何だろうか、この違和感は、まるで、ちょっと、気を抜くと、そのまま、この床に、私の靴下ごと、下へと、持っていかれるのではないかと言う

この奇妙な、めまいは

冷たいリビングに、行くと、そこで、私は、初めて、電気を、付けていないことに気が付いたが

上から、ぶら下がっている

その白い紐よりも、私はなぜか、その整頓され、なにも乗っけられていない

普段は、そんな、木のテーブルの上に、なぜか、白く、よくよく目立つ

薄い正方形の厚みを、見つける

それは、良く知って居る

私の考えが正しければ、dvdケースのようなものに、感じられた

私が、テーブルまで歩き

そのケースを手に取るが、やはり、何の変哲もない

先ほど考えた通りの、薄いプラスティックで、どうやら、裏面が、上に置かれていたようで、ひっくり返すと、そこには、透明の表面と、中に見える、丸い穴の開いた

ディスクが、手の中に、見る事が出来た

私は、何も考えることもなく、その記録末端を、テレビに、付属していた

DVDプレイヤーに、差し込むと、リモコンの再生ボタンを、押したのである



先ほどから、画面いっぱいに、映し出されるのは、大きな一物を、叩きつけられている

女の姿であった

その都度、彼の口からは、点数が、漏れ出し

全てを、見終えたとき

携帯電話に、番号を押して、耳を当てた

「紗栄子さんですか」

男の言葉は、男によって、帰された

「そうだよ、旦那さん、あんたの奥さんは」

言葉は、突如遮られた

「今どこです」

電話の相手は、一瞬口ごもったが

「いま、俺のを中に入れて」

端川は、それに対しても、冷静な、言葉で

「そんなことは、どうでも良いのです、場所を、お教え願えませんか」

相手から、返答はなく、どこかで、くぐもった声が聞こえた」

端川は、電話を切ると、妻の携帯についているGPS信号を、把握すると、直ぐにタクシーを、表に出て、捕まえる

だいぶ夕暮れ時で、温度が、下がり始めた

タクシーの中は、冷房が、効いていたが

気温の下がった外気の風が、一瞬その内部に流れ込んでいた

風と一緒に乗り込んだ、男は、GPSが、示す場所を、運転手に、言うと、静かに、ライトが点灯した車が動き出す

男が、雑多な人通りのおい大通りの前に、車が止められ

その中に、流れ込むように、列に、歩き付ける

そのまま、目的の場所は、それから、少しづれた

ラブホ街であった

その中で、男は、示された、建物の前に立ち

その建物と、先ほど写された

dvdの中身の映像を、比較して、辺りをつける

幸いにして、フロントを、通らなくても済む建物だったため

男は、その高級ホテルのような外装の

白とクリームが、白く黄色がかった明るい照明が当たる大理石の廊下を、歩いた

そのまま、目的の部屋まで来ると、一息付かず

ノックをした

しばらくして

扉が開くと、浅く、日に焼けた、がタイの良い腕が、ガウンの中から

扉を開いていた

「なっ、お前、ホテルのもんじゃ・・あ、旦那か」

端川は、軽く礼をして、有無を言わせず、中に入る

男は、柔道を、習っているが

しかし、その身のこなしは、少なくとも、自分よりも、強い雰囲気を、感じていた

「紗栄子、だらしない」

布団に、俯けになり、股間からは、体液を、白く垂らした裸体が、横たわっており

その内部には、毒々しい、大きな紫色のディルドが、突き刺さっている

二人の背後から

「もう、奥さんは、終わりだよ、これだけ、がばがばに、されちゃ」

しかし、端川は、軽く、頬を、手に当てると

目を開いた

女は、今までの、茹だる様な態勢を、ただし、風呂場へと、歩いて行く

あまりの事に男は、呆然とするが

端川は、鞄から、DVDを、取り出し

男に言う

「鳥居篭さん、私こう言うものです」

男は、渡された、白い名刺を見て、頭が、痛くなるのを感じる

「端川 湯氏」ハナカワ トウシ

それは、男に、目を見開か、止まることを、許容するには、十分な名前であった

裏千家とは、茶道の表千家と、比較するときに、何やら、危ない匂いがするが

しかし、単純に、表通りに家があったか、裏通りに家があったかの違いでしかない

柳生となるとまた話は別かもしれない

しかし、世の中には、女を落とす

女体を、観察する、一派 一族が、居る

それは、房術とは、異なり、一種独特なていを、示していた

「二秒 三十六点」

鳥居篭と、呼ばれた男は、目の前の男を、見た

何を言っているのか、それが、dvdの内容だと気が付いた時

自分の存在の点数付けが開始された

「一分三十秒 10点」

目の前で、続けられる謎の言葉

それに対して、男は、遮った

其れには意味がないと知りながら

「おっおい、何が、駄目だと言うんだ」

相手の、ただのサラリーマンとしか、見えないような、普通の恰好のはずなのに

その眼鏡には、指紋、油一つ付かず

なんてことの無い、スーツも、一つ一つが、恐ろしく、身正しい気がする

そう、こう、指を、動かすだけで、何か、自分の弱さを、言い表せてしまうような

自分よりも、強豪校の教師を、前にしたよな

何か

それは、明らかな、ルールの技術の上級者の匂い

「まず、一分三十秒、あれは・・・」

端川は、そこで、男を見たまま

「花川紗栄子、こちらに来なさい

あの時のDVDのように、一分三十六秒」

紗栄子は、まるで、それを知って居たかのように、人形のように、紙のように

さらりと、主人の目の前にいた

その唇は、まるで、椿のような、赤さと、ふんわりとした、つやを、得ていた

先ほどまで、こんなものを、使用していただろうかと、鳥居篭は、思う

端川とは、屋号だ、少し知れば、直ぐに出てくるような、大家であり

この家は、昔から、女体の研究に、熱心であった

「声を聴けば、恋に落ち

瞳を見れば、肌染まり

触られれば、二度と戻らない」

やっかいごとや、重要なことに、用意られたと言うが、真意のほどは、分からなかった

しかし、少しでも、その世界に、踏み込めば、時折、その人たちに、やられた

と言う人間を目にする

それは、到底、太刀打ちできない

一種、洗脳されているのではないかと、言われるほどであるが

その肌、振舞いからみて、それがただの色恋では、ない事は、分かってしまう


男は、目の前で、キスを、見せられていた

しかし、それは到底、情熱的、上手い、恋人

そのようなものでは、片付けられない

技能を、感じていた

一瞬のすきもない

そして、男は、女の、麗しい

唇に、すいついてはいるが

それは、まるで、洗礼された

彫刻のように、何処までも、冷たく可憐であり

それは、石像に、熱のこもった乙女が、抱きついているような

哀れさがあった

女は、ただ、技術の渦の中で、消えるまで、その感性を、技術により

壊されていく

それはまるで、自分の幼稚な

技術、欲望が、正しい悪に、染められて、行くような

絶望があった

白い紙のような、男の唇が

女の中から離れた

名残惜しいような、花弁のかまれ

踏みつぶされたように、穴の開いたような

その二つの花弁は

それでも、求めるように、顎を、男の方へと、向けて居た

「あなたの舌の当て方は、36号により、低い

体温も、キスをする準備が整っていないせいで、女性の体温の上昇が、思って居るよりも低い

まず、第一に・・・」

男は、搭乗の仕方、服装、しぐさ、歩き方、目線、言語

単純なことを言っているが、それは、師匠方の言っている物の断片を更に、超えているのが、男には、分かった

「なあ、あんた、どうして、俺にそこまで、教えてくれるんですか」

端川は、言う

「下手だからです、女体を落とすと言うのは、実験に、基づいて、行われた

現在、あなたの流派が、どの程度かを、知るために、紗栄子を、使いましたが

あなた方は、流れをくむには、著しく、向上心が、低い」

男の黒い目が、端川を、見る

自分は、何か、とんでもなくまずい事を、やらかしたのではないか

「一竜には、紗栄子から連絡を、入れます

あなたは、少なくとも、初段を、受けることは、まだ、後五年は、やめておいた方が良い

良い本を、彼も知って居るでしょうから、教えるように、言っておきます」

行きますよ、紗栄子

端川が、そう言うと、礼をして、紗栄子は、後に続いた

ドアの前で、一礼すると、男の姿は、見えなくなる

ドアが閉まり、女が居なくなると、男は一人、溜息をつく

「やはり、駄目だったか、師匠より、少し、弱い程度かと思って居たが」

男は、苗字を、聞かなかったことにも深く懺悔した

屋号とは、自分の奴隷につける

名札のようなものだ

それが、誰かに、調教されていれば、それは、植木屋が、途中で、別の人間に、とってかわって、手入れされないように、そいつの名前を利けば、特に、苗字に、名が付くと、大きい所の場合が多いが

大抵は、名前に、その流派の特徴が出る

自分であれば、水の一文字を、名前似れる

「水葉」であったり「水路」であったり

しかし、先ほども言った通り

大看板となると

名ではなく

苗字で、縛る

それは一種の調教の作品

女体の限界を、超える実験体であり

その絶妙なものを、他者に、触らせて、調律を狂わされないためのものであったりする

それが、先ほど聞いた

男は、師匠の言いつけを、守らなかっあ事について、改めて、憂鬱となる

男の脳裏には、肉体が、べつ何かに、変化したのを、見た

あの端川は、性行為で、相手を、絶対に落とさない

そう言う流派である

しかし、男でありながら

あの端川姿を、思い出した鳥居篭は、どこかで、水音がした気がした

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水川 イタチ @zzed9

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