異世界失踪
あつかち
第1話 初めてではない初めまして
「それではまた明日、さようなら」
『さいなら~』
先生の帰りのあいさつを雑に返してみんなそれぞれ帰るなり部活に行くなりし始めた。
「頼人、カラオケ行こうぜ」
後ろから友達の声がした。振り向くとそこには五人いた。全員同じ仲良しグループのメンバーだ。
まず俺に声をかけてきた腕に包帯ぐるぐる巻きの男が
その隣の眼鏡かけた女子が
で、さらにその隣のスマホをずっといじってる女子が
そしてまたその隣にいるのが
「分かった。駅前のところか?」
「ああ。行くぞ」
「オッケー」
この学校に入学してはや二年。こいつらとは高1でおんなじクラスで、そこで仲良くなった。中学ではろくに友達がいなかったからこの毎日が楽しい。高2になってクラスはバラバラになったが、この関係は続いている。
そんなことを考えながら俺は教室のドアを開けて出た。そして、数歩歩いたところで俺は立ち止った。
「は?どこここ?」
そこは、山奥にあるような、緑豊かな田舎だった。建物は見てわかるような木造建築で、あたりには田んぼが広がっている。
「うちの学校の廊下って、こんな広かったか?」
「んなわけあるか」
みんなも教室をでて、すぐに異変に気付いた。
あれ?この光景、なんか初めてじゃない気が…でも、見覚えはない…
ダーン!
いきなり、真後ろから何かをたたきつけるような音がした。
振り向いてみると、明日夜が下をにらみつけて、息を荒げていた。目線の先にはスマホがあった。彼女のスマホだ。
「どうした明日夜」
「…回線が…」
「ん?どうした?」
「回線落ちしたぁぁぁぁぁぁぁふざけんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼」
あたり一帯に響くような大声で叫んできた。鼓膜敗れるかと思った…
「あ、ほんとだ、電波つながらない」
英二がスマホを見ながら言った。みんなそれを聞いて自分のスマホを見たが、全員圏外になっている。
「え?どうして…」
「くそっ、俺の封印されし左腕の影響が電波にまで…」
「この馬鹿が」
「いつもの厨二病だろ」
「まぁそうか…」
すると…
ドカーン
遠く、しかし、ぎりぎり目視が可能なところで爆発が起こった。
「え?何事?」
「こういういきなりどこかに連れていかれた後に状況をうまく呑み込めてない状況で何か事件が起こるのはあるある。ラノベとかだとよくある話」
「ごめんなんて言ってるかわからん」
「とりあえず、行こう」
透の声を聞いてみんなで爆発が起こった方向に走り出した。
教室の扉を開いたら爆発、そしてギリ目視可能な範囲の場所で爆発…
「あ!」
思い出した。この見覚えはないのに初めてとは思えないこの感覚の正体が…
「どうした頼人?」
俺の声を聞いてみんなが足を止めた。
「これ、俺の物語の中だ…」
異世界失踪 あつかち @atukati0808
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