トリップ先の私は既に他の人と結婚していた件

事の始まり

先輩とのあの一件から既に一ヶ月が経過し、七月の始まりまさに夏が始まった。

｢楓先輩、ラブー。ルンルン｣

ある日いつものように、学校から帰っていた時に歩道の左側を歩いていた。向かい側も歩道がありその間には2車線車が通れる道がある。どちらにも白のガードレールがあり、横断歩道でしか渡ることが出来ない。そして、レンガで囲まれた木が一定の距離を開けてずっと植えてある。ガラス張りのお店が沢山並んでいてあと数百メートルでスクランブル交差点のように4方向から車が来る場所で、大通りに繋がる道になっている。ここの通りは左折してくる車がとても多い。

｢今日は、帰って塾に行かなくちゃ｣

そして、先輩に会える。やった、物凄く嬉しい。最近は、先輩とはあまり話せる時間が少なく友達と過ごすことが多かった。そのせいか、無性に楓先輩不足だった。ウィンドーショッピングが凄く好きな私は先輩とデートに行くことを夢見て可愛いい服をガラス越しに歩きながら眺めていた。

ふと足を止め、可愛い水玉の黒ベースに白の丸があるワンピースを見ていた時、ガラス越しに反対車線の横断歩道を歩いている2人に私は釘付けになった。そう、そこを歩いていたのは、まさに今目の前にある服を買って可愛いと言わせたいと思っていた相手と全く知らない女の子だった。先輩の教室には、しつこく行っててクラスの女の子所か3年の女の子の顔はほとんど覚えている。何より、制服が私達の高校とは違うのだ。一緒に歩いている女の子は如何にも先輩が好きそうな大人しめで可愛い子だった。

｢先輩｣

たった一瞬の出来事だったけど、永遠に感じるくらいくっきり2人が映ってて映画を見ている気分だった。もし私が登場してるなら、これは確実にエキストラ食い込めても恋に破れるモブキャラ。嫌だ、これは私が主人公になりたい。

一瞬でも良いから、先輩に女の子として意識してほしい。二人で、同じカプチーノなんか飲まないで欲しい。楓先輩が、好きなのは私みたいにうるさい女の子じゃないって分かってるよ、本当は大人しくしおらしくしたいよ。でも、それじゃあ何回生まれ変わっても貴方に振り向いてもらえない。

｢か…かえ…楓先輩、楓先輩!!｣

無我夢中で、走ってやっとガードレールが途切れて横断歩道を渡れると思い、何も考えずに飛び出した。あと半分もない距離を渡れば楓先輩に届く。けどその時左から鈍い音がして意識を失ってしまった。

薄ら覚えてるのは、楓先輩が私の元へ駆け寄ってきて名前を呼んでくれたこと、そして隣に居た女の子の下の名前を呼び捨てで呼んでいたこと。