大切な思い出

放課後、先輩と2人で帰れることになった私は早速髪型のアレンジに取り掛かった。二つ結びのくるりんぱ。ヘアアレンジの中では簡単だけど意外にぐしゃぐしゃになることが多く綺麗に結べたからとても満足した。新しく買った薄ピンクの色つきリップは派手ではないけどナチュラルに可愛く見せてくれる。これで、後は先輩に会うのみ。

「楓先輩とラブラブになれますように」

さっき教えて貰ってた数学の教科書を抱き締める。

「おっと」

いかん、こんな事をしていては置いて帰られてしまう。急いで先輩の所へ行こう。3年生のフロアに行ってみみは先輩が居る教室へ向かう。楓先輩は、ケータイを確認してた。

「楓先輩、帰りましょう!何なら、そのまま私の家に遊びに来ませんか?」

先輩は、半ば呆れつつも帰ろっかと言ってカバンを持って出てきてくれた。

「一緒に帰るけど、家には行かないからね」

とギロりと大きな目で視線を向けられる。

「冗談ですよ、でも半分本心です」

先輩の為に、可愛くしたけど反応ないな。やはり、私はガツガツ行き過ぎてしまっているのかもしれない。

「髪型さっきと違うね」

気付いてくれた、嬉しい!

「はい、そうなんです。ちょっと頑張りました」

そんな話をしながら学校を出て無駄話を思う存分楽しんだ。

「安藤ちゃん、数学こないだより理解出来るようになった御褒美にジュース買ってあげる」

学校を出て10分位経った頃、先輩が歩くのをやめ、自販機の目の前で止まった。

「どれがいい?」

普通のジュースを選ぼうと思ったけど、折角だから漫画みたいに炭酸を2人で買ってどちらかだけシェイクしまくるのがしたい。

「じゃあ、この炭酸のでお願いします」

先輩は、わかったと言ってお金を入れる。その隙に私も、カバンからお財布を取り出す。

「はい、どうぞ。何してるの?お金は要らないよ」

ふふ、先輩違うのです。私は、炭酸シェイクをして青春を楽しみたいんです。

「えいっ!」

先輩を無視して、私も炭酸を手に入れる。

「2本も飲みたかったの?」

まだ、飲んでないのにと苦笑い。

「先輩、これで勝負しましょう」

先輩に貰ったジュースをシェイクするのは気が引けたから、私のジュースを思いっきり振りまくった。

「ははっ、まじか。負けないから」

先輩は、今日1番の笑顔で笑う。

可愛いです、先輩!この笑顔を独占出来たらいいのにな。

「ありがとうございます、さあどっちにしますか」

先輩から見て右が振ってないやつ。左が泡になるくらいにシェイクしたやつ。

「んー、じゃあこっち」

と私の手からコーラを1つ取った。

「絶対これでしょ、安藤ちゃんが振りすぎてて何か生温いんだけど」

そう楓先輩は、シェイクしたやつを取ったのだ。想像では、ドキドキな感じで2人で開けるつもりだったのに。

「ちゃんとそっちは、大切に飲んでよね。今から俺は、ビシャビシャになるんだからさ」

既に取った時点で炭酸が吹き出るって分かってるのにどうして開けてくれるんだろう。不思議だった。

「あははっ、やっぱり掛かった」

プシャっと言う音と同時に先輩に目掛けて炭酸が飛び、手にはシュワシュワ溢れてきた泡が付いている。

「先輩大丈夫ですか、屈んでください」

急いで、ハンカチを取り出し顔を拭こうとするが先輩は私を見下ろしたまま笑って顔を下げようとしない。

「早く拭いてよ、俺が風邪引いたらどうすんの」

確信犯の笑みに変わった先輩。

「先輩、わざとですね。ネクタイ引っ張ってキスしますよ!」

とネクタイを引っ張ろうとした瞬間屈んだ先輩がじっと私を見つめる。とても綺麗な顔。

「キスなんかさせないよ、早くしてよ」

さっきより、キスできる距離なのに顔を拭くことにしか集中出来ないくらいにバクバク心臓が煩かった。やっぱり、私はまだまだ恋愛対象じゃないみたい。でも、先輩との思い出はこれが一番楽しかった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る