第13話 光り輝く正義の剣 Bパート

三輪田からの勧告から二日後の朝、町に赤色の巨人、マーベラスマイティフェイクが現れた。


「ガオーーーーーーーーーーーーーン‼」


“ガシャアアアァァアアアアアアアアン‼”


マーベラスマイティを模した体で町を壊して回るフェイクの姿に、人々は悲鳴を上げて逃げ回り、50メートル級の巨人の姿に畏怖を覚える。

混沌が支配するその場に現れたのは、修理の終わったマーベラスマイティであった。


“ガシャン‼ガシャン‼ガシャン‼ガシャン‼”


大地を震わせながら現場にやって来たマーベラスマイティの姿を見た人々は、今度こそ勝ってくれと願わずにはいられなかった。はたしてマーベラスマイティは人々の願いをかなえることが出来るのだろうか?



マーベラスマイティのコックピットで一人の女が緊張した面持ちで、モニターに映る敵を見据えていた。そう何を隠そうハルカである。

彼女は敵が現れた時、いち早くマーベラスマイティに乗り込み、研究所のスタッフの制止を振り切ってマーベラスマイティを動かしてここまでやって来たのである。


『姐さん、三輪田からの通信が来てるけど。』


「切れ、あのハゲに構ってる暇はねぇ。」


『・・・了解。』


操縦はしたことあるが、実際の戦闘経験の無いハルカにとって他のことに意識を向ける余裕はとても無かった。

自分がマーベラスマイティに乗り、敵の機体を倒す。そうすることで実績を作り、豊臣博士の作ったマーベラスマイティが軍に接収されるのを防ぐのがハルカの目的である。


「行くぞ、マベ公。ここが踏ん張りどころだ。」


『OK姐さん。』


マーベラスマイティがフェイクに向かって突っ込む。すると敵は両腕をガトリングに変えて接近するマーベラスマイティを攻撃しようとする。


「アタックバリアー全開‼」


マーベラスマイティを包む様な半透明なバリアーが展開され、ひたすら前進を続ける。


“ババババババババババッ‼”


フェイクの集中砲火を浴びるが、マーベラスマイティのバリアーはパリンと割れることも無い。だがバリアーはエネルギーの消費が大きく、展開させているのに時間制限があるので、もたもたしている暇も無い。


「おりゃあああああああああ‼」


ハルカの雄たけびと共にマーベラスマイティは右手を振り上げ、そのままフェイクの顔にパンチした。


“バキッ‼”


殴った瞬間フェイクの顔の一部が砕け散り、ダメージは通ったようだが、フェイクには独自の自己修復機能があり、そこがマーベラスマイティとの大きな違いであった。もう顔が修復しかかっている。


「HP回復(中)ってとこだな。それなら修復しきる前に粉々にしてやるよ‼」


今度は左手でパンチ。轟音と共に更にフェイクの顔が砕け散るが、フェイクもただ黙って殴られているわけもなく、ガトリングを手に戻して右手でパンチした。


”ガァン‼”


「うわっ‼」


マーベラスマイティが殴られた瞬間、機体が揺れたので、コックピットも揺れ、ハルカの爆乳もブルンブルンと震えた。機体が攻撃を受けて乳が揺れるのは最早お約束である。


「にゃろう‼」


ハルカは両手でフェイクに掴みかかろうとするが、相手も同じ行動を取ろうとし、二人の巨人は両手で組み合った。

その力は互角であり、両者とも微動だにしない。


「パッチギチェーンソー‼」


ハルカはマーベラスマイティの頭に付いたチェーンソーを回転させ、フェイクに頭突きをかまそうとする。するとフェイクは同じ様に頭に付いた剣で対応、鍔迫り合いになりバチバチと激しく火花が散る。


「剣なんて付けやがってよぉ‼」


マーベラスマイティを模しているクセに、相手の頭部がチェーンソーではなく剣になっているのがハルカには気に入らなかった。


「はいだらぁ‼」


ハルカはチェーンソーの回転数を最大限にして、フェイクの剣を叩き折ろうとする。見る見るうちに剣の方が切削されて行っているが、マーベラスマイティの頭からも煙が出始めた。


『姐さん‼このままじゃオーバーヒートしちゃいますぜ‼』


「ふんばれ‼もうすぐだ‼」


“バキッ‼”


とうとう相手の剣をへし折ることに成功。同時にチェーンソーの回転も止まってしまったのでギリギリの勝負であった。


「それ見たかボケ‼どっせーーーーーーーーい‼」


勢いのまま両手でフェイクを振り回し始めたマーベラスマイティ。そうしてジャイアントスイングのようにぶん投げた。


“ガッシャアアアァアアアアアアアアン‼”


周りのビルを巻き込んで盛大に倒れる落ちるフェイク。保険には入っているだろうが、ビルの持ち主たちのことを考えると悲惨である。


「よし‼続けて行くぜ‼」


マーベラスマイティは巨体を揺らしながら倒れたフェイク目掛けて走って行く。その間、やはりハルカの胸も揺れる。揺れるったら揺れる。

フェイクも体を起こしマーベラスマイティを迎撃する準備をする。

マーベラスマイティが右手を振り上げると、フェイクの方も左手を振り上げた。このままでは拳を突き合わせる形になるだろうが、ハルカはニヤリと笑う。


「チェンジドリルライトアーム‼」


その叫び声と右側に付いているスロットルレバーを上げると、マーベラスマイティの右腕が質量保存の法則を無視した、元の腕より巨大なドリルに変形。そのままギュァァアアアアアアアアン‼という、けたたましい音と共に相手の右手にぶつかった。


”ガガガガガガガガガガッ‼”


相手の右手を削り進むドリル。間髪入れずにハルカは叫ぶ‼


「チェンジレフトパイルバンカー‼」


今度はハルカが左のツマミを回すと、マーベラスマイティの左手上部に大きな銀色の杭が現れ、それを相手の胸目掛けてドスン‼と突き刺した。


「バンカーパニッシャー‼シュート‼」


薬莢が飛び出ると共に、ズドォォォォオオオオン‼という轟音と共に杭がフェイクの体を貫いた。


「ドリルツイスター‼」


ハルカがそう叫ぶとモニター下のボタンをポチッと押し。ドリルから竜巻を起こして一気にフェイクを吹き飛ばす。

吹き飛ばされたフェイクは再びビルを巻き込んで倒れ、もう辺りはメチャクチャになってしまった。

胸を貫かれて立て続けにドリルツイスターを喰らったのだ、マーベラスマイティは勝ったと思い、禁句を口にしてしまう。


『やったか⁉』


「バカその台詞は‼」


ハルカが嗜めようとしたが、もう遅かった。

フェイクはゆっくりと立ちあがり、破壊された箇所の再生を始めた。


「ちっ、決定打が足りねぇ。自己修復ってのは便利だな。整備士要らずじゃねぇかよ。」


『姐さん‼あんなの愛が無いですよ‼邪道の邪道です‼人が整備してこそのロボットです‼』


「はん、分かってるよ。」


珍しく熱く語るマーベラスマイティに成長を感じつつ、ハルカは考える。

どうやって目の前の敵を駆逐するのかを。

そんな時、コックピットのスピーカーからマーベラスマイティの声ではない、老齢の男の声が聞こえてきた。


《どうも豊臣テンザンじゃ。》


「テンザンおじさん⁉」


今は亡き叔父の声に驚くハルカ。しかし録音せいなのか、豊臣博士はハルカの反応を無視して話を続ける。


《この音声が流れるということは、ハルカがマーベラスマイティを動かしておるのじゃな。すまんなワシのせいで危険な目に遭わせて、天国のお前のお母さんに合わせる顔が無い。》


「そんなことない、そんなこと無いよおじさん。」


豊臣博士のおかげでロボットに興味を持ち、青春の全てをロボットに捧げて来たハルカに後悔は無かった。むしろ豊臣博士には感謝してもしきれない程である。


《さて、この音声は遺言ではない。この音声が聞こえたということはマーベラスマイティ最強武器である天地雷鳴剣(てんちらいめいけん)を開放されたことを意味する。さぁハルカ、スタンドアップと叫ぶのじゃ。世界の平和はお前の手で切り開け、それでは健闘を祈る。》


それきり豊臣博士の声は聞こえなくなった。ハルカは久しぶりに大好きな叔父さんの声が聞けて目頭が熱くなる。


『姐さん・・・大丈夫ですか?』


マーベラスマイティが心配してそう聞いたが、ハルカは流れ出ようとした涙をツナギの袖で拭い、両手で両頬をパンと叩いて気合を入れ直した。


「よし‼行くぞマベ公‼」


『はいな‼姐さん‼』


「スタンドアァァァアアアアアアアアプ‼」


ハルカの叫び声と共にマーベラスマイティのチェンソーが直立し始め、刃先が丁度天を差した時、エネルギーの刃が展開され、何処までも長く伸びて行って、とうとう雲を突き破った。


「これが天地雷鳴剣・・・面白カッコいいじゃねぇか。」


ハルカは感嘆の声を漏らしたが、敵だって黙って見ていない。

完全修復を終えたフェイクはガオーン‼という声と共にマーベラスマイティに突っ込んで行く。しかし、天地雷鳴剣が展開された時にすでに勝負は決していた。


「行くぜぇええええええええええええ‼天地雷鳴剣・お辞儀斬りィイイイイイイイイ‼」


技名の通り、マーベラスマイティがお辞儀をするように頭を下げ、巨大な光の刃がフェイクの体を消し飛ばした。


“ドォォオオォオオオオオオォオオオオオオオォオオン‼”


正に天地雷鳴の一撃。一つ間違えば文明と自然を一気に破壊してしまうかもしれない。神にも悪魔にもなれる力をマーベラスマイティとハルカは手に入れたのである。

かくしてマーベラスマイティフェイクを撃破することに成功した。


「よっしゃああああああああああああああ‼完全勝利ーーーーーーーーー‼」


笑顔でガッツポーズを取るハルカ。

天地雷鳴剣はハルカの生声でしか発動できないので、軍にマーベラスマイティを取り上げられることも無いだろう。


『やりましたね‼姐さん‼』


「あぁ、ご褒美だ♪」


チュッとモニターにキスをするハルカ。これにはマーベラスマイティも動揺し、その場にズダーン‼と倒れてしまった。

頑張れハルカ‼頑張れ僕らのマーベラスマイティ‼地球の平和を守るんだ‼


次回予告

どうもハルカだ。研究所の慰安旅行ってことで熱海に来たんだが、水着になったら男共は私の胸ばかり見て来て嫌になるよ。

さて来週は【ドキドキ‼山で遭難‼蝙蝠パニック‼】って話だ。

見ないとぶっ飛ばすぞ‼ガハハハハ♪





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切削‼穿孔‼重戦士マーベラスマイティ タヌキング @kibamusi

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