切削‼穿孔‼重戦士マーベラスマイティ

タヌキング

第13話 光り輝く正義の剣 Aパート

~前回までのあらすじ~

常勝無敗のスーパーロボット・マーベラスマイティだったが、マーベラスマイティのデータをもとに作り上げられたマーベラスマイティフェイクに初めての敗北を味わう。その時、整備士のハルカは悔し涙を流すのであった。



ここは豊臣研究所の地下、ここでマーベラスマイティは傷付いた体を癒していた。

マーベラスマイティは太い腕、太い足、ゴツイ胴体を持つ昔ながらのフォルムを持つ青色のスーパーロボットであり、最大の特徴はアメフトのヘルメットを模した頭にヤンキーの様なリーゼントを彷彿とさせるチェーンソーが付いていることである。

整備士長のハルカは階段を上がった通路の上に立ち、マーベラスマイティに面と向かってに話し掛ける。

部下である他の整備士は破損個所を修理しているが、マーベラスマイティの傷ついた心を癒せるのは完成当初から彼のことを知るハルカだけであった。


「安心しなマベ公。アタシが完璧に治してやるからな。」


『姐さんすいません。』


マーベラスマイティには人工知能が積まれており、スピーカーから合成音声を出すことにより人と意思疎通を行うことが出来たのである。

ちゃんとパイロットと心を通わせることが出来たなら、もしかすると負けることは無かったかもしれない。ハルカはそう思うやり切れない思いになる。

ハルカとは、マーベラスマイティを作った今は亡き豊臣博士の親戚に当たり、男勝りの性格で青いツナギを着た、ポニーテールの髪型の褐色の女整備士である。普段から乱暴な言葉遣いで男にも物怖じしない彼女だが、胸元から見えるJカップ爆乳が、彼女が女であることを否応なしにも物語っている。


“ツカツカ”


階段を上がってくる音が聞こえ、ハルカがそちらの方を見ると、軍服を着た集団の姿が見えた。先頭の禿げあがった頭には見覚えがあり、ハルカはチッと舌打ちをするのであった。

軍服軍団はハルカのところまで来て、ハゲたチョビヒゲのオッサンがこう聞いて来た。


「改修の方は進んでおるかね?」


そう言いながらハルカの胸ばかりに見ているハゲ親父の名前は三輪田 剛(みわだ つよし)といい、こう見えて軍での階級は少佐であった。

ハルカは三輪田の下卑た視線に気づきながらも、胸を張って堂々とした態度である。


「改修だぁ?修理の間違いだろうがハゲ親父。」


「ふん、相変わらず口の悪い整備士だ。知らされていないのか?マーベラスマイティ派武装変更の回収の後、我々軍の預かりになる。命令書が出ていた筈だが?」


「あーあれか。どうせロクなことが書いて無いと思って、ビリビリに破いて捨てちまったよ。ファック‼」


右手の中指を立てて挑発的な態度を取るハルカ。これには三輪田の後ろに居た将官たちが「無礼だぞ‼」と怒鳴ったが、三輪田は余裕の笑みを浮かべ、後ろの将官たちを宥めた。


「まぁまぁ熱くなるな。この小娘がいくら喚こうが、これは決定事項で覆ることはない。今は虚勢を張らせておけ。」


「テメー。」


三輪田を睨め付けるハルカ。今にも噛みつきそうな顔だったので、マーベラスマイティが注意喚起を行う。


『駄目ですよ姐さん。軍人に手を出したら捕まります。姐さんが捕まったら誰が俺を治してくれるんですか?』


「分かってるよマベ公。ただ腹が立ってるだけだ。」


フーッと溜息をついて心を落ち着けるハルカ。こういう時は熱くなった方が負けなのである。


「フンッ、機械人形に自我など持たせよって、そんな余計なことをするから、この間の勝負は負けたのだ。」


マーベラスマイティに対しての三輪田の侮辱の言葉、これにハルカが何も言わないわけが無い。


「あん?テメーのところのパイロットがヘボだから負けたんだろうが。それをマベ公のせいにしてんじゃねぇよ。」


マーベラスマイティのパイロットは三輪田の息のかかった嫌味な少尉であり、戦いの中で一向にマーベラスマイティの装備を上手く使いこなせず、マーベラスマイティの性能頼みで今まで戦ってきたが、この間のマーベラスマイティフェイク戦でビビった挙句に強制脱出装置で脱出、マーベラスマイティを一人残して敵前逃亡をかましたのである。


「ふん、頭がチェーンソーで、左手がパイルバンカー、オマケにワシの嫌いなドリルまで装備しておるとは、まともな装備が一つも付いてないでは無いか。そんなので今まで戦えたのが奇跡だ。今言った装備は全部外して、ビームサーベルだとかガトリング砲を付けるんだ。ドリルは絶対に外せ。」


ドリルに親でも殺されたのか、ドリルを強調する三輪田。

だがロマン武器をハルカは愛していた。


「ケッ、誰が言うことなんか聞くかよ。ロマンが分からない奴にスーパーロボットを語る資格はねえ。分かったらとっとと帰れ‼」


「ふん、言うことを聞かないならマーベラスマイティは強制的に接収させて貰う。三日後まで精々考えておくんだな。」


踵を返して帰って行く軍の連中。その後姿を見ながらハルカは悔しさから唇を嚙んだ。

このままでは叔父が命をとして作り上げられたマーベラスマイティを持っていかれてしまう、それが悔しくて堪らないのである。


『姐さん・・・。』


マーベラスマイティはハルカに掛けてあげる言葉が見つからなかった。まだまだ未熟な人工知能では人の心を完全に知るのは難しい。


「・・・こうなったら仕方ねぇ。」


ハルカは再びマーベラスマイティと向き合い、自分の決意を口にする。


「私がマベ公に乗って、あの敵をぶち倒す。うん、それしかねぇ。」


姐さんそれは無茶です、と言いたかったマーベラスマイティだったが、彼女の燃える瞳を前に、そんな野暮な台詞はとても言えなかった。




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