四谷軒「人魚と内緒話 ~ 源平の戦い、水島合戦異聞 ~」
・四谷軒「人魚と内緒話 ~ 源平の戦い、水島合戦異聞 ~」
→https://kakuyomu.jp/works/16818093080306446229
水島の船上で平重衡は、波の下で何者かが内緒話をしているような声を聴く。重衡の兄の知盛はその話を聞くと、これから源氏を迎え撃つための、一計にしようと考えた。『平家物語』などの古典を再解釈し、源平合戦の水島の戦いを描いた歴史ものショートショート。
四月から歴史もので参加してくださっている四谷さんの四作目です。幕末、革命前後のフランス、江戸時代と、いろんな場所や時間を飛び越えてきた四谷さんの参加作品ですが、今回の舞台は源平合戦です。
はい。毎度のことながら、わたくし、歴史には疎いので、源平合戦についてちゃんと知っているのは、歴史の教科書に載っている話、国語の教科書の『平家物語』の冒頭と那須与一の活躍、あと、むかーし、『火の鳥』で弁慶と義経の話を読んだような……あれはかなり創作が入っていそうなので、「源平合戦に触れた」と言っていいのか分からないのですが。それから、井伏鱒二の『さざなみ軍記』……あれ、いつの時代の頃だったか、覚えていませんね。話題になった『鎌倉殿の十三人』も見ていません! 面白いらしいですね!
日本史の授業の宿命かもしれませんが、木曽義仲との戦いのところは、省略されていたような気がします。まあ、義経と頼朝のあれこれが面白いし、後の鎌倉幕府と繋がってくるので、そこを重視する傾向があるのかもしれません。ですから、改めてこちらで読んでみて、「義仲、やばぁ」となっていたところです。
四谷さんの作品の特徴ですが、こちらが提示したタイトルを、歴史上の人物や出来事にウルトラCで結びつける手腕が、本作でも存分に発揮されています。特に、「人魚と内緒話」は、「人魚」というファンタジー存在を、どのように歴史の一幕でからませるかということに注目していました。
途中で差し込まれる人魚エピソードも面白かったです。近年では、人魚=かわいい、美しいという描かれ方が多いですが、当時目撃された人魚は、化け物化け物しています。というか、何であれを食べようと思ったんだ。日本人の習性?
えー、話変わりますが、今回も、戦のシーンは圧巻でした。知盛の、何が何でも利用して、勝ちに行くぞという気概が、かっこよくもあり、どこかおぞましくもあり。
しかし、「人魚なんて迷信だ」と一蹴していた知盛がラストでは……という展開も、中々のものです。歴史の大きな流れの真っただ中では、一瞬先は闇、昨日の勝者は今日の敗者、まさしく盛者必衰です。人魚は、その意味合いを変えていきながら、人類のすぐそばで居続けるのでしょう。
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