新巻へもん「真新しい靴がステップ」
・新巻へもん「真新しい靴がステップ」
→https://kakuyomu.jp/works/16818093075166175205
最愛の母を突然亡くした八歳の少女・イライザは、孤児院で入れられる。これまでとは全く違う生活に戸惑う日々だったが、送られてきた真新しい靴と服を身に着けて、彼女は外へ遊びに行った。一人の少女の人生の転換期を丁寧に振り返った異世界ファンタジー短編。
……作者名を見て、「ん?」となった方もいるかもしれません。そうです。書籍化、コミック化も果たした長編異世界ファンタジー『酔っぱらい盗賊、奴隷の少女を買う』の作者さんです。
まさか、書籍化作家さんが参加してくれるなんて、今でも平伏してしまうのですが、新巻さんは以前から同題異話に参加してくださっています。初参加は、二〇二一年度の同題異話・四月号「はじめましての距離」からずっと参加していただいています。
その後の、複数名に有志による持ち回り型同題異話でも、タイトルを担当してくれました。そんな風に、色んな意味でとてもお世話になっている方なので、本年度も参加してくれて非常に嬉しかったです。
さて、前置きが長くなりましたので、本編の話を。「異世界ファンタジー」ではありますが、魔法やモンスター的な存在は出てこないですね。まあ、カクヨムのカテゴライズでは、ただの「異世界」を選べないので、仕方ないですが。
とはいえ、すごく現実的な「異世界」です。イザベラの境遇、孤児院に入るまで、そして、孤児院の運営状態などなど、ちょっと、現代にも通じる問題も見えてきて、中々に世知辛いです。
そんな環境にいると、自分の運命を嘆いて、グレてしまう可能性だってあります。作中でも、無遠慮にイライザをからかう子も出てきます。自分の不幸に飲み込まれないようにする大切さを、私は『土の中の子供』で学びました。
で、そんな環境下でのイライザですが、すごく健気なんですよね。雪の下で冬を耐える種子のようで、中々にいじらしいです。
そんなイライザに、幸運が舞い込みます。しかし、この好機を未来に繋げるのは、彼女の真っ直ぐな気持ちによるものでした。こういうところが、受動的じゃないシンデレラストーリーのように感じます。
そうして、改めて商大の「イライザの恋」を見ると、非常にほっこりします。ラストの一文にもニヤニヤして、今後の彼女を陰ながら応援したくなりました。
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