榎木扇海「真新しい靴がステップ」


・榎木扇海「真新しい靴がステップ」

https://kakuyomu.jp/works/16818093075407012651


 花のJKになったばかりの咲愛さくあ。今日も妹と洗面台前を争いながら身支度して家を飛び出し、満員電車に揺られながら高校へ向かう。イマドキな女子高生の思わぬ出会いのシーンを描き出した現代ドラマ。

 作者の榎木さんは、私が主催の同題異話ではお初の方。ですが、同題異話SRには積極的に参加していたようです。こんな風に、主催者が変わっても、同題異話の縁が続くのは嬉しいです。


 ストーリー自体は四千文字ちょっとの短編で、ほぼワンシチュエーションなんですが、咲愛の独白によって、彼女がどんな性格か、その後出てくる登場人物たちもどんなキャラクターなのかが、実直に伝わってきます。これが、青春長編ドラマの第1話、と言っても違和感がないくらいです。

 そして、咲愛の性格設定がとてもいいです。本当に、普通の女の子だということが、一貫して描かれています。勉強やスポーツが得意でも、特に好きなものもなく、オタクでもギャルでもないけれど、芯がある。等身大の子がああいうことをすると、共感も得られますし、こうなりたいと勇気をもらえると思います。


 そして、とある出会いからのもうひと展開も釘付けになります。この出会いから、彼女の学生生活はどうなっていくだろうか……と期待させたところで、これ、一話完結だった! と悔しい気持ちになってしまいます。

 ありきたりな光景から、フックのある展開、個性的なキャラクターのやりとりと、展開や設定が盛りだくさんですが、最後までとても読みやすかったです。イマドキな女の子の独白も、心情ストレートすぎると読みづらくなりそうなのに、そこをギリギリで押さ得てからのバランス感覚も、素晴らしい一作でした。


















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る