錦魚葉椿「真新しい靴がステップ」


・錦魚葉椿「真新しい靴がステップ」

https://kakuyomu.jp/works/16818093075405634067


 とある港町の高校の入学式には、人間の他に、妖精やドラゴンがいる。それは、五年前に次元の間が破壊され、空間が交じり合ってしまったことが原因だった。異なる種族たちが集った学び舎で、まさに新しい第一歩を踏み出す瞬間を描いた現代ファンタジー短編。

 錦魚さんは、私が主催した二〇二一年度の同題異話の五月から、全ての同題異話に参加してくれました。本当に有り難いです。その参加作品も、現代ドラマ、現代ファンタジー、異世界ファンタジーとジャンルの幅が広く、どれも高いクオリティが保たれています。


 そして、今作はとってもメルヘンです。メルヘンですが、非常に現実的、と、矛盾したことを言ってしまいますが、具体的に言うと、色んな人外が出てきますが、その見た目や習性とか、考え方などが、現実にありそうな感じになっています。 

 他にも、この入学式に至るまでが端的に描かれていますが、本当に色々あったのだと察することが出来ます。どうやら戦争があったようですし、異種族を受け入れるために何を基準とすべきか、という討論も大変だったのだろうと、物語世界の奥行きを嗅ぎ取れます。


 人間の方も大変ですが、人外の方も苦労しているだろうなぁともなんとなく察します。誰にとっても、新しい環境に適応していくのは、とてつもない努力と妥協が必要なのでしょう。だからこそ、自然な形で手を取り合う姿が、とても美しいです。

 とはいえ、周囲と合わせるために、こちらの「現代」とは逆行しているように感じる部分はあるのは、ご愛敬と言いますか、皮肉な部分かもしれません。しかし、それでも希望に満ち溢れた言葉、そして、新しいスタートのシンボルは、眩しく光って見えました。


















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