森陰五十鈴「真新しい靴がステップ」


・森陰五十鈴「真新しい靴がステップ」

https://kakuyomu.jp/works/16818093076007452677


 レモン色の真新しい靴を履いて、胸をときめかせながらデビュタントを迎えた貴族の娘のマリー。しかし、幼馴染のカラムと踊ってみると、不測の事態が彼女を襲い……。社交界デビューを舞台に、貴族の娘の心情を丁寧に追いながら描いた短編。

 森陰さんは、二〇二一年度の同題異話の四月から、定期的に参加していただいております。参加作品は現代ドラマが多く、さりげないワンシーンから、登場人物の心情を深く深く掘っていくという印象です。


 今作は、貴族のデビュタントというあまり身近ではない題材ですが、描かれている心理は、現代人にも心当たりがあるものだと思います。そこから、一つの出会いを得て、鮮やかなカタルシスのあるシーンに結びつきます。

 この辺り、乱暴にジャンル分けすれば、ざまぁ系ともいえるのですが、そんな風に分類したくない、と思わせてくれます。物語世界の奥深さ、そして、マリーのこれからを想像し、「ざまぁ」で済まないのだと考えてしまいます。


 それから、タグには「百合?」とも書かれているのが目を引きます。この「?」マークが中々奥ゆかしいですね。このシーンだけではガロマンス、ブロマンスの女性バージョンのようにも思えますし、ここからマリーたちの関係が発展しそうにも思えますし、どんな未来もあり得ると思います。

 場所や時代も関係なく、女性が女性として輝けるのが大切だと、ここ最近『虎に翼』を見ながら思います。マリーの将来がどうなるかは全く分かりませんが、この一夜が、マリーの一生を眩しく照らし続けてくれるだろう、その確証がありました。





















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