吉岡梅「真新しい靴がステップ」
・吉岡梅「真新しい靴がステップ」
→https://kakuyomu.jp/works/16818093076033227107
・100均で売られていた室内履き用のサンダルに惹かれた小雨。彼女は、購入したそれを持って、何もない部屋へ帰ってきた……。訳ありな女性の不思議な一夜を軽やかに描いた現代ファンタジー短編。
またまた書籍化作家さんに参加していただきました。吉岡梅さんは『探偵はサウナで謎をととのえる』の作者さんであり、カクヨムコン9の特別審査員も務めた方でもあります。同題異話には、一番最初の同題異話の二〇一八年度の五月から参加していただいております。どれも個性的で一つとして同じテイストの物語はないのですが、一本の筋が取っているのを感じられます。
本作は、リアルを徹底的に描きながら、ひと匙のメルヘンが交わっていくような、まあ、具体的な作家名を出しますと、川上弘美さんの短編みたいな一作です。「神様」のような、生活の手触りを感じさせながらも、しっかり不思議、みたいなお話です。
第三者目線ですが、主人公の小雨にぴったり寄り添った本文になっています。ですが、小雨がどうしてこんな風に引っ越してきたのかは謎に包まれています。その一報で、小雨の性格は細やかに描かれているので、彼女に感情移入できる、そのバランスも見事です。
そして、特筆すべきは、中盤のワンシーン。夢みたいな、ありえない出来事ですが、ディティールは細やかに描かれて、しかし、すらすらと読めて、光景が目の前にどんどん広がっていきます。この描写力には、舌を巻きました。
「真新しい靴がステップ」というタイトルで、「の」ではなく「が」としたのにはもっと幅広く物語を浮かべられるように、という思いがありましたが、吉岡さんは、それを十分すぎるほど、汲み取ってもらえました。有り難すぎます。ラストシーンも、この「が」の意味も、しみじみ噛みしめました。
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