達見ゆう「真新しい靴がステップ」
・達見ゆう「真新しい靴がステップ」
→https://kakuyomu.jp/works/16818093075310533497
今日が県庁への出社日になった「私」。入社式の時と違い、パンプスから真新しい靴に履き替えたのだが、どうも周囲からの目線を集めているようで……。凶暴な妻と気弱な夫という、正反対な夫婦の「ユウとリョウタ」現代ドラマシリーズの短編。
達見さんは、二〇二一年度の同題異話「はじめましての距離」から、実在のウイルス学者さんをモデルにした連作「学者峰岸浩太郎シリーズ」で、一年間参加してくれました。浩太郎の恋愛がどうなるのかを、コロナ渦とアメリカ文化を交えながら進んでいき、最後までどうなるのか読めずにハラハラしました。あと、一人の主人公で同題異話を連作で書くというのも、主催者ながらに目から鱗の発想でした。
今作の「真新しい靴がステップ」は、「ユウとリョウタシリーズ」の一編として数えられています。ですが、あらすじを読めば、十分理解できる内容になっていると思います。前から出ている主役の二人の性格や関係性などは、読んでいて把握できるので。
前作を読んでいても楽しめる、というのは、とても難しいと思います。週刊誌連載作を、途中から読ませるみたいなことですから。しかし、説明を懇切丁寧にすると、読ませたいストーリーが中々始まらない、という事態に陥ってしまいます。
その点、達見さんは非常に軽やかになっています。登場人物たちの個性を際立たせ、しかし、面白い場面はしっかりと描く。そして、忘れてならないのが、これがお題ありき企画であるということ。きっと、キャラクターが達見さんの中に「存在」しているので、出力するのが簡単なのでしょう。
満足感を持って読み終えた後に、文字数が二千文字ちょっとであることに驚いてしまいます。それくらいに構成力と文章力があり、転調が激しいけれど、混乱しません。そのあたりも、見習いたいと思う一作でした。
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