エピローグ
エピローグ
私は今、舞台の上に立っている。四人の仲間とともに。華々しい衣装を纏って、まばゆい光を一杯に浴びている。
客席の暗がりの中には、いくつもの幼い顔が見え隠れする。退屈そうな顔、楽しそうな顔、怖がっている顔――みんなそれぞれ違う表情をしていて、同じものは一つとしてない。
しかし、この公演が終わるころには、彼らはみな、ほとんど同じ顔をするようになるのだろう。それをどうにかすることは、私たちにはできない。
だから、私たちは、彼らの中に紛れている私たちのために、この声を届ける。
「憧れ」を伝えていくために。あの日受け取ったものが「呪い」ではなく「祝福」なのだと、信じられるように。これは自分自身で選び取った道なんだと、自信を持って言えるように。〈再生産〉のためではなく、あくまで自分のために。
地面を強く踏みしめる。底無しの冷たさが体を貫く。つくづく、世界というのはそういう風にできているものだと思う。
だから、自分の気持ちは自分で守らないといけない。そうでないと、それはいつの間にか嘘になってしまう。
仲間たちと目を合わせ、一歩前に出る。
私たちは、私たちのためにここに立っている。確かなのは、そのことだけだ。
舞台が始まる。
かくして、私たちは再始動した。
ぽとん、と、何かが落ちる音がした。
再・情動 —根之尾 鵙太 筑駒文藝部 @tk_bungei
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