作者覚え書き
作者覚え書き
この作品は、今年二月に行われた複数校での文藝部交流会に合わせて寄稿したものだ。体調不良により、けっきょく交流会に参加することはできなかったが、これは私の作品の中でも特に思い入れが強い短編である。
私の名前に添え書きされた、「原案:筑駒演劇部」という文字列について触れよう。話は昨年十月、まだ蒸し暑かった頃に遡る。私は文藝部員でありながら当時中学演劇部の部長を務めていた。うちの演劇部は既成の台本などは使わず、部員たちが話し合ったり即興劇を交えたりしながら劇を創り上げてゆくスタイルで、当然ながら大量のボツ案が生まれる。この「水を言葉のメタファーとする」世界観も、文化祭に向けての劇作の途中で生まれたものだ。滝のように滑り落ちる言葉たち、というモチーフは部員たちにも非常に好評でかなり我々の想像力を刺激するものだった。残念ながら劇として日の目を見ることはなかったが、それを拾い上げて小説の媒体としたのが本作である。
最初は上記の世界観のみがあり、演劇部での議論の最中でストーリーも生まれるには生まれたのだが、文字として表現するのが難しく、破滅ファンタジーの要素は私のオリジナルだ。だが全く別の物語を複数書き、連作として発表する構想も練っている。楽しみにしていて欲しい(実際に楽しみにしてくれる人がいるのかどうかはさておき、私も完成が楽しみだ)。
この小説が何を意味しているのかについて話し出すと、元々イタい「作者覚え書き」がさらにイタくなってしまうのでそれは避けるし、また私自身何か特定の隠喩を意図しているわけではない。文体については、気持ちだけではあるが川端の「雪国」を真似た箇所がある。どこがやねん、というツッコミはやめて欲しい。彼の表現の美しさは、模倣ですら雪の結晶を新潟から沖縄まで運ぶより難しい。そのあたりの表現はまだまだ課題が残るところだ。私が書くとどうしても若干の稚拙さを感じさせてしまう。
最後に、我々のインスピレーションの大元となった「Word Cascade」というWebサイトを紹介しようと思う。ランダムな単語が滝のように次々と落ちてくるというだけのシンプルなサイトだが、ことばが好きな者にとってはいくら見ても見飽きないファム・ファタールだ。水と言葉を結びつける発想はここから生まれた。
「Word Cascade」の製作者に感謝する。また、演劇部のみんな、執筆のきっかけをくれた交流会関係者の皆さん、そして書くに際してアドバイスをくれたS君とTさん、私の隣で執筆を見守ってくれたチワワのソーに感謝する(海外文学とかでよく見る謝辞を私もやってみたかった)。
https://river.tango-gacha.com/
「滝」より Ⅰ 渇水 筑駒文藝部 @tk_bungei
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