第七話 最終話
私たちは顔を合わせることなくゴンドラを降り、しっかり手をつないだままだが一言も喋らずに遊園地を後にした。少し名残惜しいなと思って振り返ったが陽はどんどん前に進んでいく。しかし陽が進んでいく方向は来た駅と真逆だった。
「どこに向かってるの?」と聞いても陽は顔をこっちに向けずに歩いていく。5分くらい歩いた後ホテルの前で陽がぴたりと足を止めた。やっと陽がこっちを向いて言う
「今日は一晩泊まっていこう?」
「予約はとったの?」
「うん....」
そう言う陽の顔は赤くなっていた。私としても今から帰るのは体力的にも限界だったので嬉しかった。ホテルは二人部屋で広めの部屋だった。せっかくだからとホテルの大浴場に向かったが、私たち以外誰もいなかったので実質貸し切りだった。多くの種類のお風呂があり、炭酸風呂や色のついたお風呂もあった。さすがに陽の上に乗って入るのははばかられたので、陽と並んで入った。肩を寄せ合って、今日一日中歩いた疲れを取った。そのあと遅い時間だったが食堂はやっていたので軽く食べてから部屋に戻りベッドに並んでテレビを見ていたが、眠気が急にやってきてそのまま気絶するように眠ってしまった。
起きたら目の前に陽の顔があった。私が抱きつくような大勢なのでおそらく昨日寝落ちするときに抱きついてしまったのだろう。頭が覚醒してきて、昨日のことがフラッシュバックしてきた。体が熱く顔が紅潮しているのが鏡を見なくてもわかる。まだ陽は起きなさそうなので、朝風呂に入りに行く、時計を見るのを忘れていたため浴場が開いているかわからなかったが浴場につくとちょうどホテルスタッフが準備を完了させたところだった。私以外に人はいなかったのでゆっくりとお湯につかっていると人が増えてきたので上がることにした。そのあとまだ寝ている陽を起こして、ホテルにあるビュッフェで食べて昨日洗濯に出しておいた服を受け取り部屋に戻った。
「今日はどうする予定?」
「今日はかえってゆっくりしようかな。詩乃ちゃんも疲れたでしょ?あと少しだけ配信したいし」
「うん、でも夕方から行きたいところあるから付き合ってよ」
チェックアウトを済ませて、新幹線にのって帰った。
夕方までお互いにゆっくりして、夕方になったので陽と一緒に家を出た。
まず最初に向かった場所はレストランだ。少し値は張るがおいしいと評判のパスタがある。陽はパスタが好きなので前から連れてきたかった。予約済みなので着いてすぐに店内に通され、もちろんパスタを注文した。
「おいしい!詩乃ちゃんよくこんなお店知ってたね。」
「このまえ雑誌を見てたら広告があってね。陽を連れてきたかったの」
陽は夢中で食べ満足して店を出た。
「もう一か所よっていい?配信の時間までには間に合うから。」
そう言って私が陽を連れてきたのは観覧車だ。
「観覧車?」
「うん、遊園地にはなかったでしょ?乗りたくて」
と2人分のチケットを買って受付に行く。並んでいる人はいなかったので、スムーズに乗ることができた。
高度が上がっていく、ジェットコースターは怖いが観覧車なら怖くはない。景色をみながらどんどん上がっていく。そろそろ頂上に着くころに、私は陽の隣から陽の正面に移動した。
「詩乃ちゃん?」
一度目を瞑って深呼吸して言う。
「私も陽のことが好きです。私と付き合ってください。」
言ってしまった。
陽に告白されてからずっとどうするべきか、私はどうしたいかを考えてきた。
結論自体はすぐに出た。しかしどう伝えるべきかと陽との関係が変わることへの恐怖があった。でも陽が遊園地に連れて行ってくれたことで私がどうしたいのか覚悟が決まった。だから前から連れて行こうと計画していたレストランに急遽予約を取り、陽に告白されたのは海だったことを考えていたら観覧車を思いついたので観覧車で気持ちを伝えることを決めた。
目を開けると陽が泣いていた。陽は目をこすると
「もちろん。これからもよろしくね詩乃ちゃん!」
と満面の笑みで私に抱きついてきた。うけとめると観覧車が揺れたので怖がっていると、
「詩乃ちゃん。」と呼ばれ顔を見ようとしたらキスされた。
「ふふ、詩乃ちゃんのまね~」と陽が言うので思わず笑ってしまった。
そうして観覧車が一周し降りたら、景色がまた違って見えた。横にいる陽を見ると笑い返してくれるし、お互いの手は指と指を重ねあうようにしてつながれている。そうして私たちは家に帰り
配信を付けた
「みなさんお久しぶり!第25回ひるよるラジオ。ひる担当のひなと!「よる担当のよるのです!ゆっくりしていってね!」
・ひさびさだー
・なんか二人ともテンション高くない?
・よるちゃんのテンションどうしたw
私たちの様子がおかしいことに気づいた人がいるようだ。気を引き締めなおそうとすると陽が
「気づいた?実は嬉しいことがあってね.....」
・なんだ?
・ついに結婚か?
・お休み中はなにしてたんですか?
「じゃあ一つずつ話していこうか、まずはね...」
陽が始めた奇妙なこの配信はもう私の生活の一部になっている。これからも陽と一緒に生きていくことに今までに感じたことのない幸福さを感じる。
「ちょっとよるちゃん?ボーっとしてどうしたの?」
「ごめんごめん、今は水族館の話?」
「うん!よるちゃんがクラゲを無限に見てた話してる!」
「だってかわいいじゃん、くらげ」
この配信は告白関連だけ除いてこの配信をしてなかった間の話をいっぱいしていく。
「じゃあ今日はこのあたりで終わろうかな。よるちゃんもいい?」
「うん。では皆さんご視聴ありがとうございました。ひるよるラジオまた次回までさよなら!」
終わり
百合営業から始まる百合 緩音 @yurune
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