第六話

朝目覚めると抱き枕を抱えていた。陽の家に引っ越してきてからは毎日陽と寝ていたのでなんだか落ち着かないというか違和感がある。目をこすりながらロビングへ行くとソファーで陽が寝ていた。まだグッスリ寝ているので起こさないように注意しながら朝ご飯を作った。完成したころに陽が起き上がったので顔を洗ってくるように言ってその間に机の上に料理を並べ陽が戻ってきてから食べ始めた。

食べ終わったのでお皿を下げようとしたら陽から声をかけられた。

「詩乃ちゃん今度の土日予定ある?」

スマホのカレンダーを確認して言う

「空いてるけどどうしたの?」

「デートに行こ!」

「で、デート?どこに行くの?」

「秘密。楽しみにしてて。じゃあ駅前に9時集合ね。」

と言って陽は着替えて大学に行ってしまった。私は今日は講義を取っていないので先週の配信の切り抜きの編集をしたり時間がかかる料理をしたりした。

土曜日になって駅前に行ったらもう陽はついていた。

「ごめん陽待った?」

「ううん、今来たとこ。じゃあ行こっか。」

そう言って陽が私の手を握って駅のほうへ歩いていく。何とか歩幅を合わせて陽の隣に行って聞いてみた。

「どこ行くの?」

「まだ秘密。」

新幹線に一時間くらい乗った後バスに乗って移動した。見たことがある景色だった気がしたが思い出せずに10分くらい移動したあとに

「次で降りるよ」と陽が言った。バスを降りるとそこには遊園地があった。この遊園地は高3の受験が終わった後に陽と行った遊園地だ。

「陽ここって...」

「うん!1年半くらい前に来たとこだよ!あれから新しいアトラクションも増えたみたいだよ。

早く行こ!」

と言って陽は入り口に走って行ってしまった。早歩きで何とか陽に追いついて手を握った。

「デートなんでしょ。ちゃんとエスコートしてよね。」

「うんっ!」

そう言って手をつないだまま遊園地に入った。

遊園地に入って、まず最初に乗ったのはジェットコースターだ。この遊園地はこのジェットコースターに乗るために来る人がいるほど人気だ。開園直後だったので20分くらい待つことで乗ることができた。私たちが前行ったときは2時間待ちでさすがに乗るのをあきらめた。やっと乗ることができたので楽しみだったがその気持ちはジェットコースターが発車してすぐに打ち砕かれた。最初は緩やかに昇っていって楽しかったが下るときにほぼ直角に下るのあまりにも怖すぎてそれからずっと体を抑えるためのバーに全力でしがみついていた。一瞬陽の方を見たが陽はどこにも捕まらず楽しんでいた。

ジェットコースターを終え次に向かったのはお化け屋敷だった。

「待って陽、私ほんとに無理なんだけど。」

「大丈夫!私が手を握っててあげるから。」

「そういう問題じゃないよ...」

私はごねたが陽はお構いなしに私をお化け屋敷の中に引っ張っていった。

私がお化け屋敷を嫌う理由はお化けが怖いから、なんて理由ではなくただただ暗いところが苦手だからだ。陽の腕にしがみつきながら進んでいく。日本風のお化け屋敷なのでいたるところに日本人形が置いてあって不気味だ。遠くから不気味な笑い声や叫び声が聞こえる。少し進んだ後に人が立っていて、「ここから先は一人づつお進みください」と言われたので先に陽が行き、あとから私が行くことになった。陽が行ってから2分くらいしたあとに私も出発した。怖いので目を半目にして歩いていく。陽がいないので心細いがゆっくり進んでいくと、緑色の光が奥に見えた。そこに近づくと暖簾がかかっていたので入ってみるとそこには生首があった。

叫ぶ暇もなく私は走った。もう怖すぎてどうにかなりそうだったのでとにかく走った。

外の光が見えたのでそこに一目散に走っていく。

やっとの思いでお化け屋敷から出ると陽が待っていた。脱出できた安堵から陽に抱きついた。

泣きはしなかったが、体感10分くらいはそのままでいた。

そこからは遊園地のキャラクターのショーを見たり、軽食を取ったりしていたら日が沈んできた。最後に陽がどうしても乗りたいというので、ゴンドラに乗った。これはゆっくりと園内を周れるもので地上から離れているので夜景がよく見える。私は陽の隣に座りさっき買ったぬいぐるみを抱えながら景色を楽しんだ。ふと陽を見ると目が合った。

「今日はありがと、楽しかった。」

「ならよかった、詩乃ちゃんがお化け屋敷で泣いちゃわなくてよかったよ。」

「うるさい。忘れて。」

ゴンドラが上昇していく、最初に乗ったジェットコースターやまだパレードをやっているのが見える。今日が終わってしまうことに寂しさを感じた

ゴンドラも終盤に差し掛かり、遊園地のメインのお城の前を通った時に

「ねえ陽?」

「何?詩乃ちゃ」

陽の名前を呼んで陽がこっちを向いたタイミングで私は陽の唇を奪った。


------------------------------------------------------------------------------------------------------------多分次回最終回です。

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