第五話目

「詩乃ちゃん、あなたが好きです。付き合ってください。」

唐突にそう言われた。陽に連れられて一日遊んだ後に夕日を見てたら、いきなり告白された。

陽がふざけて言っている可能性もあるので顔を見たがこれはマジだ。目が真剣だった。

確かに私も陽が好きだ。それは間違いない。でもそれが恋愛感情的に好きかと問われると答えはNOだ。でもここで断ってしまったら陽との関係が切れてしまう気がした。なんと答えようか迷っていると

「ごめんね詩乃ちゃん困らせるつもりはなかったんだけど」

そう言われハッとしてまた陽の顔を見るとひどく傷ついた顔をしていた。こんな顔にさせたのが自分だと思うと心が痛くてたまらない。私は覚悟を決めて陽に言った。

「ごめん陽。私はあなたとは付き合えない。」

「そっか....ごめんね。変なこと言っちゃって。」そう言って陽が向こうに歩いて行こうとする。

「待って!」何を言えばいいか頭がこんがらがる。涙が出そうになるがこらえずに叫ぶ。

「私も陽が好き、これは間違いない。でも私にはこれが恋愛感情かどうか分からない。私に時間を頂戴。1か月後には結論を出すから。わかってる。これは私に虫の良すぎる話だ、でもお願い..ちょっとだけでもいいから時間を...頂戴。」

叫んでその場にうずくまる。こんな絶叫したのはいつぶりだろう、頭に酸素がいかない。立ち上がれずにいると陽が近くに来てハンカチを渡してくれた。

「真剣に考えてくれてありがとう、詩乃ちゃん。じゃあ一か月後に聞かせてね。でも私はもう気持ちを伝えたんだからグイグイ行くよ?その気になった私は強いからね!」

「ありがとう。陽。」

そう言って陽の手を掴んで立ち上がる。立ち上がったので手を放そうとしたが陽ががっちり私の手を掴んでいる。

「あっあの陽...?手、話してくれる..?」

「嫌だ、手つないで行く。」

そのまま陽が歩き出したのでついていく。手を放すタイミングを失ったのでレストランに入るまで手をつないだままだった。

食べ終わってレストランを出るとまた手を奪ってきた。次は恋人つなぎをしてきた。指と指の間に陽の指があってなんだかこそばゆい。家に帰ってきたら陽がすぐにお風呂を沸かして一緒に入れられた。また頭を洗われて体を洗おうとすると、陽にスポンジを取られて背中にごしごしと擦り付けられた。そのまま陽は前も洗おうとしてきた。

「待って、陽。前は自分でやる。」

そういったが陽はお構いなしに私の体を洗っていく。

ついには向かい合うようにして足まで洗われてしまった。

浴槽に入った後も陽の攻撃は続いた。いつものように私を陽の足の上に乗っけると、最初はほっぺを延ばしたり、手を触ってくるだけだったがどんどんエスカレートして足を絡めてきたり私の体を触ってきたので、身の危険を感じた私は陽の隙をついてお風呂場から脱出した。

すっかり体が火照ってしまったので、ベランダに出て体を冷やした。昼は暑かったが夜は少し冷えていて熱くなった体に風が当たって気持ちいい。そのまま数分ベランダの手すりにもたれかかって体が冷めきる前にリビングへと戻った。リビングに戻ると陽が映画を見ようとしていた。なんの映画か聞くと去年上映された映画で私も名前を聞いたことがある作品だったので一緒に見ることにした。そしていつものようにソファーに座って見ようとしたら陽に後ろから抱きかかえられて、陽が普段使っているビーズクッションにそのままダイブした。陽を睨むが陽はニコニコして気にしていない様子だ。まあ映画に集中すればいいやと思って映画を見たが、私はこの映画を見たことを公開した。この映画は二人の少女が恋に落ちる百合漫画を原作にした映画で直接的なR18描写はないもののキスシーンとかイチャコラするシーンがたくさんあった。陽はどんな顔してみてるのかはなぜか怖くて見れなかった。映画を見た後から陽の様子がおかしくなった。視線を感じて陽のほうを見るとすぐに視線をそらされる。回り込んで顔を見に行ってもまた顔をそむける。耳がなぜか赤くなっているが気にせず問い詰めると。

「さっきの映画のき、キスシーンあったでしょ?それから詩乃ちゃんの顔を見ると唇が妙に艶やかに見えて...。」

私はそれを聞いてぽかーんとなった。なんでそれが私と目を合わせない理由になるのだろう。と少し考えたらある1つの考えが浮かんだ。

「えっとあの、陽?それはもしかして私とキスしたいってこと?」

言ってしまってハッとする

「あ、そんなわけないよね!ごめん変なこときいちゃ」コクリと陽がうなずく

「ふぇ?」と私の口からまぬけな声が出る。たしかにそうかもって思ったけど!でもさすがに違うと思ったのに!

私たちの間に気まずい空気が流れる。私が口を開けて

「じゃ..寝よう..か?」

「ううん詩乃ちゃん今日は一人で寝れる?私は詩乃ちゃんと寝たら寝付ける気がしないからソファーで寝るね...私の部屋にある抱き枕貸してあげるから..」

「あっうん分かった、ありがと..」

そう言って部屋に戻った陽から抱き枕を渡されて寝室に行った。少しだけ陽の匂いがする抱き枕を抱えて私は眠りに落ちた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る