第4話 夢のような結婚式、そして……
「それでは、新婦の入場です」
大聖堂の結婚式場、司会者の合図で、スモークが私を包み、目の前の扉が開いた。
式場内は、まだざわついていた。招待客の皆さんには、次期国王と結婚すると伝えていたので、新郎は第一王子だと思っていたはずだ。
でも、祭壇前に立つ新郎は、第一王子ではなかったのだから、ざわつくのは当然だ。
司会者が拍手を求め、私は温かい拍手に包まれた。
両親に付き添われ、祭壇前で待つ新郎へと、私たちは歩を進める。
中央のバージンロード、両脇のチャーチベンチ、祝福してくれる招待客たち。
途中で、両親は歩を止めて、真っ白なウエディングドレスをまとった私だけが前に進む……
「病める時も健やかなる時も…」大司教様が何か言っている……私はボーっとしていて、夢心地だ。
幼い頃のことを思い出す。
彼は、私の王国へ留学に来ていた時に、幼い私を助けてくれた。
そして、私は彼を好きになった。幼いながら、結婚を申し込んだが、大人になってからだと、保留された。
留学が終わった後は、文通を続け、恋心は手紙に書けなかったけど、想いは通じていると信じていた。
それが、第一王子との政略結婚が決まり、私は落ち込んだ。
それを慰めてくれたのも彼だった。彼だって、つらい想いだったのに……
昔のことを考えていたら、突然、私の顔を隠していたベールが上げられた。
目の前に黒い瞳、黒髪の彼がいる。着替える時間が無かったから、濃い紫色のエンビ服のままだ。
「王弟殿下……」
「クロガネと呼んでくれ……」
誓いのキス……唇が熱い……
ついさっき、国王陛下を病院へ送り出した直後だった。
王弟殿下が、私の前でヒザを折り、忠誠心・永遠の愛を誓うポーズ……
そしてプロポーズの言葉……
私は夢の中にいるような、フワフワな気分。
ドキドキが止まらない。
「おめでとう、フランソワーズ!」
会場から、同級生たちの声援が上がった。
私は、たくさんの絆に支えられていたんだ。今度は、私が、みんなを支える番だ。
大聖堂の前、青空の下、ブーケトスが始まる。
奪い合いが起きないように、十分なブーケを用意して、配っていく。
みんな笑顔だ、夢のような時間が続く……
「大変です、国王陛下が息を引き取りました!」
誰かが、青い顔をして走り込んできた……え? まだ私たちの結婚式の途中ですよ!
大聖堂の前は大騒ぎになった。これでは、次のパーティーは中止だろう。
「行くぞ、フランソワーズ」
「はい、旦那様」
夢から目が覚めた。これから、忙しくなる。
でも、私を支えてくれる人たちがいる、彼がいる……
ウエディングドレスをつまみ、旦那様と一緒に走る。
━━ FIN ━━
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結婚式一時間前なのに婚約破棄された令嬢の周りはザマァにまみれて追放される 甘い秋空 @Amai-Akisora
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