記憶をなくした花

@tyanaka

第1話 記憶をなくした花

人生が変わるようなことは唐突に起こる。

そして、それは誰にも止めることは出来ない。


( 痛てぇ..なんだこれ..血か..意識が...と..ぶ.. )

ん..どこだここ..

気がついたら俺は病院にいた。てか、なんで病院なんかにいるんだ。んー...あっ、思い出したぞ。俺は運転中に、暴走していた車に突っ込まれたんだった。痛てぇ..身体の節々が痛てぇ...。ったく、金欠なのに入院なんてさせるんじゃねえよ。

「おはようございます。」

声が聞こえた。あぁ、もう朝になっていたのか。何時間寝ていたんだ俺は。

「あぁ、おは..」

俺はその声の主の方を向いた。俺は驚いた。彼女は花のようだった。美しかった、言葉じゃ言い表せない程に。

「っぁ、ドモ」

今、キモかっただろうな。俺。

「随分の間眠っていましたね。大丈夫ですか?」

「は、はいもう大丈夫っス。」

見栄を張ってしまった。本当は身体中が痛いぃ..。

「あなたがこの病室に来る前は一人で寂しかったんですよ。いやー、あなたが来てくれて良かったです。良ければ、話し相手になってください!」

どういうことだ..。話していいのか?この、俺が?

「いいんすか..?俺で..?」

「はい!!お願いします!!」

21歳俺 、人生で一番嬉しいかもしれない。事故ってきた車にも少しは感謝しなくてはな。

「えっと..?あなたは?」

まずは名前を聞かなくてはな!!

「あぁ、忘れてました。わたしの名前は...

分かりません!!」

は?分からない?どういうことだ?

「私、記憶がないんですよね。」

記憶が...ない..。

「えっ、それってどういう..」

「友達とか、家族とかも全て忘れてしまって..言語は覚えていますよ。いつかは記憶戻るらしいんですけど..。」

ちょっと待て、困惑しすぎて話が掴めない。

「友達も家族も全て..忘れた..?」

「はい。そうです。」

何故こんなに冷静でいられるんだ?俺だったら..。考えたくもない..。

「最初は自分が何者かも分からず、不安でしたけど、今は少し落ち着いています。」

彼女は深呼吸したあとこう言った。

「ごめんなさい。こんな話をして。ですが、話せたおかげで安心しました。」

俺は悲しいと思った反面、嬉しいと思ってしまった。俺にこの話をしてくれたことに。最低だとは分かっている。

「話を聞いて下さりありがとうござ..」

「俺に、俺に出来ることがあったらなんでも言ってくれ!!」

俺は決めた。余計なお世話かもしれない。だが、少しでも早く彼女の記憶を取り戻す。

「いやいやいや、そこまで迷惑かけられませんよ!」

「俺にこの話をしたんだ。いや、してくれたんだ 。責任取って記憶を戻してやるよ。」

俺はできる訳が無いことをいった。だが、成し遂げてみせる。

「...はい!ありがとう..!」

彼女は泣いていた。

「これからもよろしく!友達!」

「はいっ!!これからもよろしく!私の最初の「友達」!!」

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