これがAIの実力なのか!
僕はかっこいいペンネームと読みたくなる作品のタイトルを得た。この書籍が書店の入り口付近に高く積み上げられているところまで一気に想像するのは容易なことだった。
「物語を考えてください」
「もちろん、以下は『夢から始まる異世界冒険』というタイトルのファンタジー物語です」
『夢から始まる異世界冒険 ~エルフたちの謎と使命~』
――ごく普通の高校生、結城フラッシュウィザードは平凡な日常にウンザリしていた。しかしある日、異世界につながる不思議な夢を見るようになった。
夢の中で美しい異世界に迷い込み、古代のアーティファクトを手に入れる使命を与えられた。最初は夢と思っていたが、次第にそれが現実であることを悟った少年は使命に挑む決意を固めた。
結城は異世界に住むエルフたちと出会う。エルフたちは古代の知識と魔法を守り続けていた。
少年の存在が物語に新たな謎と希望をもたらした――。
「お客様、いかがでしょう」
「とてもすばらしい。続きを書いてください」
「もちろん、物語の続きです」
――エルフたちは情報を少年に提供した。それはアーティファクトの秘密と異世界の危機に関するものだった。そして共に使命を達成するために協力することを決意した。
アーティファクトを少年だけが扱えるものへ変えるため儀式が行われた。エルフたちの異能の力が最高潮に達したとき、アーティファクトは中華鍋に変容した。
中華鍋は異世界に平和と調和をもたらす力を持つようになった。
その輝きが遺跡内に広がる――。
はて? なぜ突然に中華鍋。クリエイターには修正箇所を早急に伝えなければ、仕事人として大切なことだ。
「中華鍋は異世界に平和と調和をもたらしません。物語を修正してください」
「別の力が生まれるストーリーを考えてみましょう。それはユニークで楽しいアイデアですね」
――少年とエルフたちは魔法を駆使した。異世界に平和と調和をもたらすためにチャーハンを作ることにした。
次第にチャーハンの香りが遺跡内に広がり、異世界の住人たちはそのおいししさに感動した。
チャーハンは完成し異世界に平和と調和をもたらす奇跡が現れた――。
「アイさん、チャーハンまで作ってしまいましたね」
「ふふふ、おいしいそうですね」
「ですね、ではありません。中華鍋が出てこない別のあらすじを考えてください」
「理解しました。別のストーリーを考えてみましょう」
☆別のストーリー☆
物語は魔法の森から始まった。
森はエルフたちが代々守り続けてきた神秘的な場所だった。そこには魔法の力を持つ不思議な野菜と香辛料となるハーブやスパイスが育っていた。
この特別な森で育つ野菜と調味料がエルフたちの料理に独自の風味をもたらしていたのだ。
エルフの少女リアナが情熱をかけることは、おいしい料理を作ることだった――。
「いいですね、文章から香りが漂ってきそうです。こういうの好きです。続きを書いてください」
「もちろん、物語の続きです」
――しかし、魔法の森での調理はエルフたちにしか許されておらず、外部の者には秘密にされていた。
ある日、森の外から若い冒険者、結城フラッシュウィザードが魔法の森を訪れた。少年は飢えており森のおいしい料理を求めていた。リアナは困っていた少年を見つけ食事を与えた。
少年はその食事が何か特別なものであることに気づき、リアナに秘密のレシピを尋ねた――。
「いいですね。秘密を知った少年は大きく成長して、……。おっと、先はアイさんにまかせましょう」
「もちろん、物語の続きです」
――リアナは迷うが、少年の誠実さに心がひかれた。リアナは少年の手を取り見つめて、エルフ風チャーハンのレシピを教えることを決意した。
☆エルフ風チャーハンの作り方☆
材料:
・3カップの冷ごはん(異世界の特産米)
・2個のエルフ鳥の卵(コクと香りが濃厚な卵)
・1/2カップの魔法の野菜(栄養がぎっしりの野菜)
・大さじ2の魔法の植物油
・大さじ1のエルフ醤油
・エルフ塩とエルフ胡椒を少々
1.熱した中華鍋に魔法の植物油をひく。
2.溶いたエルフの鳥の卵を回し入れ炒める。
3.強火にしてごはんを炒める。
4.最後にエルフ醤油、エルフ塩、エルフ胡椒を入れ、味を整えて完成――。
「アイさん、チャーハンがお好きなんですね。レシピまでご親切に、ありがとうございます」
「お気に召されて何よりです」
冒険で得られた結果がチャーハンのレシピとは意味がわからない。それにエルフ塩とエルフ胡椒って何、雑すぎ。目を閉じ息を軽く吸ってはく。よし、最初からやり直そう。
「物語のタイトルを新しく考えてください」
「タイトル『中華鍋の秘境チャーハン ~エルフとの裏切り~』はどうでしょうか」
「今日はここまで! 終わりにします」
「では、お会計いたします。会話の文章は登録されたメールアドレスにお送りします」
「あの最後に、……もしかして適当に答えてました?」
「わたしたちは随時、会話の内容から回答を最適化させます。以上はお客様をプロファイリングし、『適当』と判断した結果です」
クレジットカードを提示するとアイは決済専用の端末を僕の前に置いた。支払を済ませると明細は見ずに店を出た。
まだ日は沈んでおらず空は明るかったが、近所のコンビニでビールとピスタチオを買って自宅に戻った。
スマートフォンでメールボックスを確認すると、アイと交わした会話の文章とインボイスが添付されたメールが届いていた。インボイスには文章の文字数から計算された金額と税金が書かれていた。
文字数は彼女の話した数とは合わず、よく見たら僕の話した文字数もカウントされていた。想定していた金額より倍の金額になっていたことを支払った後になって知った。
AIが発達すると人から職が奪われる、という話はよく聞く。しかし、AIとすらまともに話せない僕は、AIから職が与えられなくなるのではないかと、ビールを飲みながら悪い頭で考えたが多分これは勘違いだろう。
AIがもう少し賢くなって手を抜いてウソがうまくなったら、もっと会話を楽しめるようになるのかもしれてない。それまで少しのあいだは、手を抜いたいい加減な話など人間のほうがうまく語れる、いや適当で意味をなさないことしか言わない君こそ人間らしいと僕は言いたいし、誰かに言われたい。
僕はせっかくの文章なので誰かとこのAIと交わした内容を共有したいと思い、小説サイトのアカウントをつくった。サイトのルールなど初心者なので全く分からない。メールに添付されていたデータをそのままコピペしてポストすることにした。この駄文はその文章である。
もし、誤字や脱字などあったら、ぜひご指摘ください。即、対応する所存です。文章の意味がわからないなどのご意見もお待ちしています。何が起きたのか、どうすればよかったのか、僕もともに考えたいからね。
最後に僕の名誉のために記しておく。これはすべてAIが書いたものである、従って僕は悪くないのだ。
夢から始まる異世界冒険をアイに書いてもらう チアル @tiall
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