俺からしたらただの……

 由菜を探し始めたはいいものの、全く見つからないし、話しかけてこないけど、遠巻きから俺の事を見てきている女の子の一人に聞いてみることにした。


「あっ、ねぇ、ちょっといい?」


「えっ? う、うん、な、何?」


 そうして声を掛けると、まさか話しかけられるとは思ってなかったのか、その子は誰が見ても分かる通り動揺したような感じでそう返してきた。

 

「金髪のポニーテールで耳にピアスが空いてる女の子が今どこにいるかとか、知ってたりしない?」


「え……えっと、さっき見たけど、な、なんで?」


 何故か俺を心配するように、その子はそう聞いてきた。

 ……あっ、そうか。

 俺からしたら不良っぽいことをしようとしてるただの可愛い女の子なんだけど、喋ったこともなければ確かにただの不良少女だもんな。

 俺も前世で可愛い女の子がいきなり不良の場所を聞いてきたら余計なお世話かもしれないけど、心配くらいはしてたかもな。


「会いたいからだよ。一応言っておくけど、見た目はあんな感じだけど、いい子だからね?」


「……うん。……屋上の方に向かってたよ」


「そう? ありがとね」


 教えてくれたことにお礼を言って、俺は言われた屋上に向かいだした。


「う、うん。……あ、あの、私でよければ、何か、相談事があったら、乗るから!」


 すると、後ろからそんな声が聞こえてきた。


「うん。ありがとう」


 俺の事を思って言ってくれた言葉だろうし、素直にお礼を言って、俺はそのまま今度こそ屋上に向かった。


 由菜がスマホを学校に持ってきてたら誰かに聞いたりせずに直接聞けたのに、持ってきてないからなぁ。一応不良少女なくせに。

 そんな割と理不尽な不満を内心で思いながら。


 そして、屋上までやってくると、さっきの子が言っていた通り由菜は屋上に普通にいた。

 

「由菜!」


 それを確認した俺は、少し迷ったけど、普通に声をかけた。


「ふぇぁっ!? お、お前、な、なんでこんなところに……」


 すると、由菜は想像よりも大きい反応でびっくりしていた。

 もしかしてだけど、まだ朝のことを恥ずかしがってるのか? ……別にそういうつもりで由菜のところに来た訳じゃないんだけど、そんな反応を見せられたら、またからかいたくなってくるじゃないか。

 ……まぁ、時間が経ったのに本当に恥ずかしそうにしてるくらいだし、我慢するか。


「由菜に会いたくて、ここに来たんだよ」


「は、はぁ!? な、なんか用事でもあるのかよ」


「んー、ただ、由菜と話したいなって思ったから、来たんだよ。ダメだった?」


「な、なんだよ、それ。……べ、別に私はお前……優斗と話したいことなんて無いけど、優斗が何か私と話したいことがあるのなら、す、好きにしたらいいだろ」


「なら、休み時間が終わるまでもう後ちょっとしかないけど、少しだけ話そっか」


「……ちょっとだけだぞ」


「うん」


 由菜が恥ずかしそうにしつつも、素直に頷いてくれたのを確認した俺は、由菜と隣に移動した。

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貞操逆転世界に転生したから無自覚な振りしてハーレム作ろうと思ってたのに最初に攻略した幼馴染がそれを許してくれない! シャルねる @neru3656

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