第30話 ルア・ユーヴェラス
一体何度、俺は彼女に驚かされるのだろうか。
『
それは、『
ルアは確かに言った。自分は、その人の娘だと。
「突然だったんだ。『
懐かしむような調子でルアは己の過去を告げる。
「だけどね、そしたら村の皆が怒っちゃったんだ。ただでさえ大罪を犯した人の娘なのに、その上で本人から贈り物まで貰ってるんだから当然だよね。皆、大切な人や物を失ってるのに……」
ルアは、笑っていた。
何がそんなに面白いのか俺にはわからなかった。だけど笑って話続ける。
「だから私は、罰として利き腕を切られた。そして、フットレストに追放された」
ルアは視線を左腕へと落とした。何もない左腕へと。
「最初のうちは大変だったけど、素性を隠してお店のお手伝いとして働くこともできたから、そこまで生活には困ってなかったよ? ──でもある時、ウォルフさんに会うことができた。あの時は、流石に運命を感じたなぁ」
嬉しそうだった。ルアはまるで幸運が舞い降りてきたかのようにその時のことを振り返る。
「罪滅ぼしができるって、そう思った。これが私のやるべきことだって、そう思えたんだ。だから、『
ああ、ルアは、彼女は──。
「これは私が必ずやり遂げなきゃいけないことなの」
そう思わなければ、生きていけないほど──。
「だから、止めたいなら、私を殺すしかないよ?」
「…………」
再び彼女は画用紙を構えた。【
「師匠、手出さないでください」
「……いいのかい?」
「はい」
きっと、師匠の手伝いがあれば、ルアを止めることは格段に簡単になる。
でも、それじゃあ何も意味がないと、そう思った。
彼女は、ずっと苦しんできたのだろう。
一人で、ずっと、許される方法を考えてきたんだ。
そうやって思いついたのが、ウォルフへの協力だった。
「……でも、それじゃあただ悲しいだけだ」
だから、向き合わなければならない。
目を背けず、しっかりと。
ルアが抱えている悲しみを見つめなければならない。
一歩、確かな覚悟を以って前へと進む。
「絶対に止めるからな、ルア!」
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